「夢を追うのにもリスクがある。沼ってあるんです」社長からの暴行、子宮頸がん…32歳グラドルが年内で引退を決意した理由

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最後の舞台への思い

 林さんは今月12日から芸能生活最後の舞台「誰かの為の歌姫」に立つ。自身がプロデューサーを務める舞台は、“西成の歌姫”と呼ばれる坂田佳子さんをモデルに、林さんの人生を重ねた物語だ。

「最後だからと事務所が舞台を企画してくれて、脚本まで書いてくれました。演出家の意図としては御涙頂戴で終わらせたくないということで、内容は人生の寄り道ハートフルコメディです。脚本家の方も私の病気を知ってくださった上で『これから治療するにせよ、いつでも戻ってこられる場所はある』という意味も込めて台本を書いてくださって。本当に私のための舞台なんです」

 今回、林さんにとって嬉しいことがもう一つある。芸能活動についてよく思ってはいなかったという両親が、初めて舞台を見てくれるという。

「父親は芸能活動にはずっと反対でした。ご当地アイドルをやっていた頃もグラビアをやっていた頃も絶対見ないと言っていたんです。でも実家に帰った時に、探し物を頼まれて父親の机を探していたら、私がライブをしている写真が出てきて。私が雑誌に掲載されたものも切り抜きでちゃんとファイリングしていてくれていて」

「子宮頸がんになったとき、親からは『もういいから早く帰ってきて』と言われていたんです。でも12月までは自分の人生を、夢をテーマに生き抜いていこうと決めたので。20年間エンターテインメントの世界に生きてきて、自分の最後の姿をどうしても親に見てほしい。そして今までやってこなかったけれど、舞台が終わったら頑張ってきた自分を褒めてあげたいんです」

「親孝行ってなんですかね?」

 引退後は実家に戻り、まずは親と一緒にいたいという。

「これまで病気とかいろいろありましたが、病室で目を覚ますとそこにはいつも親がいてくれて、その安心感がすごくかったんです。なので引退したら実家に戻って親との時間に向き合おうと思っています。そして病気にちゃんと向き合いたいです」

 林さんはそう話すと「親孝行ってなんですかね?」と私に質問した。壮絶な人生を聞いた後、なんと言っていいか迷ったが「親より長く生きることじゃないかな」と答えた。だからこそ林さんに生きていてほしいという思いもあった。

 芸能人・林美佐としての最後の舞台の幕がもうすぐ上がる。少女の頃に抱いた夢への道のりは荊(いばら)という表現でも生ぬるいほど厳しく、刃物のような現実に血を流しながら歩んできた。そして舞台を降りれば、再び病気との戦いが始まる。その人生を知ればいつかハッピーエンドがやってくるとは軽々しく言えない。ただ神様がもう少し彼女に優しくあることを願う。

前編【いじめ、給料ゼロ、枕営業…引退する32歳グラビアアイドルが歩んだあまりに残酷な“夢への道”】からのつづき

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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