「質と量の戦いだよ」あるウクライナ兵士はつぶやいた…ウ地上軍に密着取材、日本人記者が見た緊迫の東部戦線【写真多数あり】

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記者が身を守るのはまさに自己責任

 ロシアとの地上戦がもっとも激しく行われているのはウクライナの東部戦線。その戦闘の実態を見ようと、私たちは東部ドネツク州の前線に向け車を走らせる。対向車線には次第に軍用車両や救急車が多くなってくる。

 車の窓から見えるのは、どこまでもつづく真っ平らの耕作地だ。収穫を待つトウモロコシ畑の黄色と発芽した小麦の緑のコントラストが美しい。おや、珍しく山がある、と思ってよく見るとボタ山だった。ここドネツク州は炭鉱が多く、石炭をもとに重工業が発達した土地柄である。

 前線への距離が10kmを切ったころ、私たちは車を停めてヘルメットと防弾チョッキをつけた。ウクライナ国防省が私たちジャーナリストに発行した記者証には、「ウクライナ国軍は戦闘地域でのあなたの生命・健康に責任を持たない」と明記してあり、身を守るのはまさに自己責任である。

 緊急事態に備え、すぐに車から脱出できるようシートベルトをはずし、電波で位置を特定されないよう、スマホは電源を切るか「機内モード」に設定する。いよいよ前線である。

ロシア軍陣地への砲撃後は「走れ!」

 着いたのはウクライナ地上軍榴弾砲部隊のある分隊の作戦区。案内する兵士のあとについて林の中を進むと、木陰からニョキっと突き出した砲身が見えた。2S1グヴォズジーカ122ミリ自走榴弾砲だ。キャタピラを持つ機動性の高い火砲なのだが、ここでは地面に掘った壕の中におさめられ、一見トーチカのようだ。

 射程は約15km。これから5300m先のロシア軍陣地を砲撃するという。カメラを構え待っていると、砲弾発射の轟音とともにあたりが煙で真っ白になった。その直後、「走れ!」と兵士が叫ぶ。砲弾の発射地点に向けてロシア軍が反撃してくるからだ。私たちも兵士と一緒に全力で走り、数十メートル離れた地下壕に飛び込んだ。

 ロシアが発射した砲弾が着弾する音とこちらから砲撃する音がひっきりなしに響くが、着弾音の方が頻度は高い。ということは、ロシア軍の砲撃が量的にはウクライナ軍のそれを上回っていることになる。

 ウクライナ軍は6月の反転攻勢の開始以降、前線の戦闘の主導権を取ってきたとされるが、10月に入り、ロシア軍が東部戦線で圧力を強め、とくにドネツク州の要衝、アウジーイウカの掌握を狙って攻勢をかけている。自走砲を防御陣地のように使用しているのも、攻めてくるロシア軍を迎撃するためではないかと推測する。戦線が膠着している実態が垣間見えた。

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