地方在住の富裕層が“高級腕時計”は買っても、「仮想通貨」や「スポーツカー」の購入はためらう“都会では考えられない理由”

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地方の富裕層はなぜ周りを気にするのか

 地方を取材していると、意外なところに年収数千万の富裕層がいて驚くことがある。株やFXなどで人知れずに富を築いた人もいれば、実は都心の一等地に不動産を持っている人もいる。本当は東京で事業を手掛けたいのに親戚づきあいや取引先の事情で、地方で暮らす人もいるし、逆に、東京に出ないからこそ地方で無双できるなどと考えている人もいる。

 事情は実に様々だが、地方で富裕層が生活するうえでは、面倒なことがかなり多いそうだ。具体的には、東京の富裕層のような贅沢ができず、慎ましやかな暮らしを営んでいる人が少なくない。地方では周りの目を極端なまでに気にして生きる必要があるためだ。親が興した会社を引き継いだ2代目経営者で、数十億円の資産を持つA氏はこう語る。

「とにかくお祭りや行事で寄付を求められたり、昔の友人が借金の無心に寄ってきたりして面倒が多すぎる。銀行の営業マンがいちいち自宅の座敷にあがり、延々と金融商品の案内をしていくことも。東京ならきっぱり断れるような案件だと思うでしょう。でも、うちみたいな田舎では地元の付き合いの関係上、無碍にはできないんですよ」

 まさに、人づきあいが濃密な地方ならではの悩みといえよう。

コンプライアンスの意識が希薄すぎる

 さらに、地方は、コンプライアンスの意識が都心より遥かに希薄である。例えば、役所の人間の口が極めて軽いことが挙げられる。本来はそれではいけないと思うのだが、職業上、知り得たことを平気でベラベラとしゃべってしまう。そして、田舎の口コミの広がる速度は凄まじく、SNSよりも高速で地域一帯に伝播する。さきのA氏もこう話す。

「家族旅行に行っただけで、すぐにバレる。『昨日は家にいなかったみたいだけれど、どこに行っていたの』などと、近所のおばあちゃんから言われます(笑)。夜中に家の電気がついていなかったので分かったらしいんですが、おまえは探偵か、と突っ込みたくなるほど。田舎なんてプライバシーはゼロ。完全に筒抜けですよ」

 地元で高額な納税をしたり、銀行に大金を預金したりすれば多額の財産があることがばれてしまうリスクも高いため、様々な防衛策をとっているという。例えば、地方の富裕層の間では現金志向が強い。資産を隠すために都合がいいからだ。NFTにせよ、仮装通貨にせよ、取引の記録が残る。一方、現金は極めて匿名性が高く、記録が残らないメリットがある。もちろん、脱税が目的ではなく、「富裕層であることがバレない」ために有効なのだ。

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