【創価学会元理事長・長男の苦悩】修学旅行でお土産に買ったダルマを母親に捨てられ…信心はなくなっても学会はやめない事情

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 安倍晋三元首相の殺害事件をきっかけに“宗教2世”が注目され、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への解散命令が請求されるに至った。だが、宗教2世問題は統一教会に限らない。ジャーナリストの藤倉善郎氏が、創価学会の元理事長・正木正明氏の長男である正木伸城氏(42)に話を聞いた。

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 8月に次期衆院選での東京での自民党との選挙協力の解消を宣言したものの、9月には結局「復活」で合意した公明党。自民党との連立政権を組む中、支持母体である創価学会の信者からも何かと批判の声が出ている。

 創価学会の元理事長を父に持ち、祖父の代から信者という学会3世でライターの正木伸城氏は、2004年に創価学会本部に就職。だが、そんな公明党への疑問から2017年に本部職員を辞して転職した。

「祖父が入会したのは、池田大作 氏の会長就任(1960年)のちょっと後くらいでした。創価学会が伝統宗教を含め他宗を全て邪宗だと強く非難していた時代です。私自身も主に母から、神社の鳥居をくぐってはいけないとか、寺社でお守りを買ってはいけないと言われて育ちました」

 小学6年生の時、伸城氏は修学旅行の土産にダルマを買って帰った。母親は「こんな邪宗のものを買ってくるから頭痛がする」と怒り、ゴミ箱に捨てた。ダルマはインドから中国へ仏教を伝え、禅宗の祖となった達磨大師が起源だが、一般的には縁起物としてのイメージが強く、神社や土産店など仏教以外の文脈で売られていることも多い。

「同級生たちと『このダルマを生涯持って、俺たちの友情を常に思い出せるようにしようぜ』と言い合って、自分の分も買ってきていた。それを捨てられたので、本当に悲しかった」

 創価学会の他宗批判は、他宗の信者を自分たちの教えに導く「折伏(しゃくぶく)」でもある。それにより貧病争(ひんびょうそう)の宿命すらも転換できるというのだ。

「ダルマを捨てた時の母も、たまたま機嫌が悪かったのではなく、教えに沿って子供をしつけているつもりだったのではないでしょうか。父母が育った時代は、日本中が信仰の有無に関わらずどんどん豊かになっていった高度経済成長期。その恩恵を、折伏をしたおかげだと捉えて信仰への確信を深めてきた人もいると思います」

創価学園での同調圧力

 苦い思い出は、家庭内だけではなかった。小学生時代に学校で父親の仕事についての作文課題を発表させられた時のこと。

「私の父は世界平和のために世界中を飛び回っています、みたいなことを書いて発表したら、同級生から『お前の親父、何者? ヒーローか何か?』みたいな反応を受けました。ぼくは当時、いじめられていたんですが、それが加速しました。親が学会員だったことで被害を受けたと感じた初めての経験でした」

 公立の小学校を卒業後、中学・高校は学会員の子息が大半の創価学園、大学は創価大学に進む。中学時代には、学校でちょっとした“事件”もあった。

「創価学会が激しく非難していた日蓮正宗の阿部日顕・第67世法主について、ぼくが同級生に『本人に会ってみるまで判断は保留する。いいやつである可能性だってある』と言ったんです。当時、父は創価学会の青年部長だったのですが、その息子がヤバいことを言っていると同級生の親御さんに伝わり、親御さんからうちの母に連絡が入り、母から『あんた、学校ですごいこと言ってるみたいだね』と怒られました。創価学園はいちおう宗教法人とは別団体という建前なので、教師から何か言われることはありません。しかし、同級生や親からの同調圧力を感じましたね」

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