追悼・谷村新司さん 神田・神保町「芳賀書店」代表が語る「谷村さんが店番をしていた」ウラ話

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コンサートのあとに直行する店

 谷村新司さん(享年74)の思い出は尽きることがない。「デイリー新潮」でもお伝えしたが(10月18日配信「追悼・谷村新司さん 吉田拓郎から『信用できねえ』と突っかかれて…筆者に語った爆笑エピソード」)、親交のあったアーティストたちが語るエピソードは、どれも優しく、誰からも愛された谷村さんらしい話に溢れている。

 特に文化放送「セイ!ヤング」などのラジオ番組はじめ、「チンペイ・バンバン」コンビとして同時代を過ごしてきたシンガーソングライターのばんばひろふみさん(73)が10月18日、「ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!」(ラジオ関西)で語った話は、谷村さんファンにはたまらないもの。そう、谷村さんの「ビニ本コレクター」に関する話である。

〈チンペイさんが家を建てた時におじゃましたら、案内された部屋の一面がビニ本だった〉

〈アリスが武道館コンサートを終えると、行きつけのビニ本屋にいってそこで店番をしていた〉

「懐かしいですね。武道館でコンサートの時に、空き時間や終わった後に、近くにある有名なビニ本屋に行ったことを、ラジオで嬉々として話していたのを思い出します。ビニ本ネタのトークはお馴染みでしたが、あの谷村さんが武道館から直行する店って、どんな感じなのだろうと、子ども心にワクワクしたものです」(50代の谷村さんファン)

 この頃はアリスも人気絶頂にあり、素晴らしい楽曲を唄うシンガーだった谷村さん。でも、ラジオでは隠すことなく、ビニ本マニアぶりを語っていた。

 さて、ばんばさんが語っていたように、谷村さんには行きつけのビニ本店がいくつかあったようだが、そのうちの一つが武道館から歩いて行ける、神田・神保町にある芳賀書店。アダルト本をビニール袋に入れて販売するビニール本(ビニ本)の発祥として知られる。

芳賀書店と谷村さん

「父からも聞いていますが、谷村さんがうちの店によくいらっしゃっていたのは本当です。ずいぶんとお買い上げいただいたと思いますよ」

 と語るのは、芳賀書店代表の芳賀英紀さん。同書店の三代目になる。

 芳賀書店は1936年に巣鴨で創業した。空襲で被災したことから48年に神保町に移る。もともとは雑誌・書籍の古書店だったが、出版部門があった時期もあり、映画スターの写真集や小説なども刊行していた。だが、二代目の英明さんが働き始めた75年ごろは、業績が低迷していた。

「そこで、父は売り場の一角でアダルト本を売ることにしたのですが、これが当たったんです。それで売り場を拡張する際に、立ち読みや万引きを防ぐために、1冊ずつビニール袋に入れたのですが、これがビニ本と呼ばれるようになりました。ウチが名付けたのではなくて、世間というか、周りが知らないうちに名付けていたんですね」(英紀さん)

 結果として、ビニール梱包のおかげで回転率はよくなり、売り上げ増につながった。79年には神保町の古書センター7階にも出店。この頃からマスコミでも取り上げられるようになり、全国で“ビニ本ブーム”が沸き起こることに。谷村さんがラジオでトークしていたのもこの頃だ。

「古書センター店は08年に閉店したのですが、路面店で人目につきやすい本店に比べて、利用しやすかったと思います。センター店の扱いはすべてビニ本などアダルト関連だったので、ジャンルも豊富でまとめ買いをするにも便利でした」(英紀さん)

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