なぜ信長役に世界的バレエダンサー・ルジマトフが? 黒澤明作品が好きで「侍の資質を表現したい」

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 日本舞踊とバレエのコラボ作品「信長―SAMURAI―」が、4年ぶりに日本で上演される。10月25、26日に東京・浅草公会堂の舞台に立つのは、ロシアが誇る世界的バレエダンサーのファルフ・ルジマトフ(60)だ。サンクトペテルブルクでリハーサルに励む本人が意気込みを語った。

「以前から武士道やサムライ、ロウニン(浪人)にはとても興味がありました。でも、戦国武将の織田信長についてはこの作品に出会うまで知りませんでした」

 多くの資料を読み込んで理解を深めたという。

「信長は自己に矛盾を孕む、強烈な個性の持ち主。日本舞踊家と同じ舞台に立つのは初めての経験でしたが、新しい仕事は面白いですし、歴史的な人物を演じることに強い魅力を感じました」

 ルジマトフは大の付く日本通。芥川龍之介をはじめ、安部公房、川端康成、加賀乙彦らの作品を愛読してきた。映画も黒澤明監督の作品がお気に入りという。

「侍の資質――常に死を覚悟した潔さや男らしさは、現代では失われているでしょう。しかし、舞台ならそれを表現できる。それこそが演技者に許された特権であり、幸せなことです」

「言葉は通じないが問題ない」

 日本から遠く離れた異国で生まれ育った彼は、どんなノブナガを目指すのか。

「歴史上の人物を忠実に再現しようとは考えていません。私の内側で生まれる感情を“信長”という役に与え、あくまで私がイメージする彼を演じるつもり」

 秀吉役はボリショイ・バレエ団で外国人初のソリストを務めた後、ロシアの国立バレエ団芸術監督となった岩田守弘(53)。斎藤道三と明智光秀は、藤間流日本舞踊家の藤間蘭黄(60)が演じる。舞台を彩る音楽は、箏(こと)や囃(はやし)子などで構成されるオリジナルの楽曲だ。

「蘭黄さんとは言葉は通じませんが、まったく問題はありません。肝心なのは、舞台上で互いに何を伝えるか。目の表情や視線、ジェスチャーで理解し合えます。また、守弘さんも内面に力を持つアーティスト。互いに刺激し合えています」

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