30年前と酷似…中国で進む若者の日本化 “寝そべり族”の大量発生で「恋愛の仕方がわからない」

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8連休の活況でも解決できない経済問題

 中国では今年、中秋節と国慶節(建国記念日)の休日が重なり、国慶節ゴールデンウィークが8連休となった。

 中国交通運輸省の事前予測では、8連休中に公共機関や自家用車で移動する人数は延べ20億5000万人だった。前年に比べて観光収入が大幅に上昇する見込みだったため、「国慶節ゴールデンウィークの活況が中国の景気回復につながる」との期待も出た。

 だが、「目下の経済問題の解決にはつながらない」とする悲観的な見方も根強い。中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ。

 中国政府の元高官が9月下旬に「(現在国内にあるマンションの空室や空き家について)中国の人口14億人でさえ全てを埋めることが不可能だ」との見方を示したように、住宅用不動産の過剰供給は周知の事実となっている。

「泣き面に蜂」ではないが、商業用不動産市場の苦境も明らかになっている。中国のオフィス空室率がゼロコロナ政策を実施していた時期よりも悪化しているのだ。

 英国系不動産サービス企業「サヴィルズ」によれば、中国の4大都市である北京、上海、広州、深圳の今年第2四半期の高級オフィスの空室率は前年に比べて軒並み悪化した。最も深刻なのは深圳で、空室率は27%に達している(10月5日付日本経済新聞)。

 中国では、個人資産の7割を不動産が占めると言われる。そのため現在は、多くの人々が代替投資先として金(ゴールド)の購入に走っており、金の価格がこのところ高騰している(10月4日付Forbes)。

「金融危機」の懸念も台頭するなど中国経済の混迷が続く中、最も危機的な状況に追い込まれているのが若者たちであるのは言うまでもない。

若者たちを突き放し、「引き締め」を強化する中国政府

 中国政府が失業率の数字を公表しなくなったために最近の動向はわからないが、若年層(16~24歳)の雇用状況が改善しているとは思えない。

 シンガポール紙「聯合早報」(10月2日付)は、中国財政省の発表として、今年1月から8月までの宝くじの売上高が前年比約52%増の3757.61億人民元(約7兆5000億円)だったことを伝えた。同紙によると、中国メディアは宝くじ販売店の多くが「以前より若者が増えた」とコメントしたことを報じ、SNSでは巨額当せん金の使い道を想像するトピックが人気を呼んでいるという。そのためSNS上では、若者たちにとっての宝くじは「溺れる者がつかむ藁」とみなされるようになっているそうだ(10月5日付Record China)。

 このような状況にもかかわらず、中国政府は若者たちに救いの手を差し伸べる姿勢を示していない。それどころか、「苦労は買ってでもしろ」と突き放し、思想や行動に対する「引き締め」の強化に走っている印象が強い。

 中国では9月に入り、北京の名門大学のキャンパス内で宣伝活動が強化され、スパイを見つけた場合の通報方法に関する短期集中講座が実施される事態となっている(9月15日付ブルームバーグ)。

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