藤浪晋太郎が「スーパーリリーバー」に進化、直近15試合で四球は2つ…阪神時代とは明らかに違う周囲の扱い

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「ヤツこそブルペンの主役だ!」

 この“急転直下”ぶりも、彼の魅力だろう。

 9月18日(現地時間)、オリオールズの藤浪晋太郎(29)が対アストロズ戦で2点リードの6回から登板したが、3安打と暴投で3失点。これが9月に入ってからの初失点となった。シーズン60試合目となる節目の登板だったが、前日の登板では見事に打者を抑えていたのだ。

 本拠地「オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズ」で迎えた17日(同)のレイズ戦、1点ビハインドの9回に藤浪晋太郎(29)がマウンドに向かった。チームのポストシーズンマッチ進出のマジックナンバーは「1」、「早く優勝を決めてくれ」と願う地元ファンは、藤浪の名前がコールされると、大声援を送っていた。

「この日はビハインドでの登板となりましたが、FUJIは勝ちゲームのリリーバーだと認識されているからです」(米国人ライター)

 藤浪は最速101.5マイル(163.3km)の剛球を投げ込み3/2イニングを20球無失点で切り抜け、チームは延長11回、5-4で逆転勝ち。レイズは見事、プレーオフ進出を決めた。

 まさに「勝利を呼び込む男」となった藤浪は、マジック「4」で迎えた14日のカージナルス戦でも登板しているが、その際に中継していた米ネットラジオ局のフラットリーツ・ポッドキャストのアナウンサーは、藤浪がマウンドに向かっているときから、

「ヤツこそブルペンの主役だ~、辛抱した甲斐があったゼ!」

 と絶叫していた。

 辛抱――そう、オリオールズのファンは7月19日のトレード成立以降、藤浪のボールカウントの多いピッチングにハラハラさせられてきたのだ。デッドボールも多い。それが“人気”を呼んでいたのだが、藤浪は明らかに変わった。

 18日のアストロズ戦で救援に失敗するまでの7試合のデータを見てみると、自責点「0」、奪三振数は「9」、7回3分の1を投げ、WHIP(1イニング当たりの与四球数+被安打数)0.82。四球に至っては8月16日のパドレス戦から15試合で二つしか出していない。阪神、アスレチックスにいたころとは別人で、「スーパーリリーバー」に進化してしまったのだ。

自分の最高の武器は直球

 14日の試合で、地元放送局MASNの実況アナウンサーが、こんなことも喋っていた。

「ひと月ほど前まではスプリットの軌道が不安定で痛打されることもあった。それで直球中心の配球に変えたのかな? でも、FUJIは101マイル(約163キロ)を投げられるんだぜ。なぜ、アイツはスプリットやスライダーを多投するのか、分からなかったんだけど、気付いたんじゃないかな、『自分の最高の武器は直球だ』って」

 このアナウンサーの指摘通りなのだ。MLBの公式HPによると、絶好調となった直近の試合での投球は約55%が直球となっており、その前は30%台だった。

「オリオールズに移籍してきた後、チームのスコアラーやアナリストたちにずっと言われていたんです、『ストライクゾーンに投げ込めば、メジャーリーガーでもそう簡単には打てないよ』って」(前出・同)

 チームのリーダー的存在でもある正捕手のアドリー・ラッチマン(25)も藤浪に声を掛け続けた。投球が、ミットを構えたコースとは反対に行ったときがとくにそうだった。攻守交替でベンチに下がる際に2人が近づく。藤浪から、逆球になったことを謝ると、

「ナニを言ってるんだ? 美しい軌道だったよ!」

 と、反対に褒められたそうだ。

 また、9月9日(現地時間)のレッドソックス戦だった。藤浪は3番手で5回途中から登板し、打者5人を抑えて7勝目を挙げたが、試合後、ブランドン・ハイド監督(49)は、

「ピッチャー・オブ・ザ・ゲームは、FUJIだ!」

 と、声を張り上げた。乱打戦のなかでゼロに抑えた藤浪のピッチングを絶賛したのだ。

 ラッチマンのリードも直球中心となる。チームのスコアラーやアナリストたちに「FUJIの直球は打てない」と連呼され、指揮官も褒めてくれる。最初は「本当かなあ?」と思ったのかもしれないが、結果が伴うにつれ、藤浪も自信を持ったのだろう。

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