ロシアスパイが防衛族議員に食い込む日本人記者に大胆な提案 唖然としてしばらく何も言えなかった【元公安警察官の証言】

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しく映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩み、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、日本人ジャーナリストを協力者にしようとしたロシア大使館のスパイについて聞いた。

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 スパイが情報収集を行うといっても、国によってその手口は異なるという。

「中国は、スパイが直接動いて情報収集することはありません」

 と語るのは、勝丸氏。

「彼らは日本にいる中国人留学生などを協力者に仕立て、情報収集を行います。『協力すれば、国にいる両親の年金額を増やしてやる。だが、協力を拒否すれば、両親がどうなっても知らないからな』などと脅すのです。拒否する者はほとんどいません」

 ところがロシアの場合、中国とはまったく手口が異なるという。

Defense Attache

「ロシアのスパイは、自ら情報収集を行います。例えば、パーティーやシンポジウムなどに出席し、日本企業の社員と名刺交換し、その後連絡して食事に誘い、だんだんと親しくなっていきます。最初は会社のHPに載っているような公の情報を提供してもらい、その見返りに3000円のクオカード。次に社内報をもらって5000円の図書券……という具合に徐々にハードルを上げていきます。そして機密情報には現金数十万円が渡される、というのがひとつのパターンになっています」

 ところが約3年前、ロシアのスパイがこれまでと全く異なる手口を使ったという。

「自民党の防衛族に食い込んでいる、あるジャーナリストが都内の街中でナンパされるようにロシア人から『こんにちは』と声をかけられました。彼はそのジャーナリストのことを元々知っていて、『田中さん(仮名)ですね。私はロシア大使館の者です』と流暢な日本語で話し名刺を差し出した。名刺にあった肩書きには、英語でDefense Attache(国防武官)と書かれてあったといいます。それでジャーナリストは、そのロシア人が軍直属の諜報機関であるGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)の局員だとすぐにわかりました」

 ジャーナリストは職業柄、ロシアのスパイがどのようにして協力者に仕立てていくか熟知していたという。

「彼は自分に対して、スパイがどのような行動をとるか興味があったそうです。GRUからすれば、ジャーナリストは即戦力になると思ったようです。防衛族議員や秘書と頻繁に会っているし、議員会館にも自由に出入りできます。防衛族の議員名簿や防衛に関する勉強会の名簿を入手できると思ったのでしょう。あわよくば自衛隊や米軍の情報収集も考えていたのかもしれません」

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