映画のようにはいかない…「処理水の放出はテロ!」韓国の政治家が猛反発しても「反対運動」が盛り上がらない背景

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 韓国メディアは、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の問題を連日のように報じている。もっとも野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)党代表の処理水反対運動は、国民の支持を得られていないという。海産物を避けようとは考えない若者も多く、世代間での差もあるようだ。【韓国コラムニスト/児玉愛子】

「強制略奪や慰安婦を盾にしている」

 この夏、韓国のテレビニュースでは、各局とも処理水の問題を熱心に伝えていた。

 中には処理水が水産物の生態に影響を与え、人体にも危険を及ぼすかのような解説もあり、聞いているこっちが恐ろしくなるほどだ。「“原発汚染水”の影響で、早くも海鮮料理店で閑古鳥が鳴いている」という報道もあった。

 そんな折、今月1日に日本で公開された韓国映画「復讐の記憶」(2022年製作)では、強烈なセリフが飛び出す。親日派の教授が講演シーンで「我々は日本に対して強制略奪や慰安婦の問題を盾に、今も戦争を続けている」と嘆いているのだ。

 教授は、「日本が朝鮮に鉄道と港湾を建設したことにより、朝鮮半島が発展した」と説明した上で、「元(王朝)に支配されたからといって中国を憎むのか?」「女真族(※満州に居住していた民族)に収奪されたと、今も恨んでいるか?」と問うている。

 そして、「私たちはそれを歴史の一部と捉えているはず」と結論づけ、日本と友好関係にある台湾を引き合いに出した。

 原発の処理水について「処理水の放出はテロ!」と怒りをぶちまけ、断食による抗議活動までした「共に民主党」の李在明 党代表がこの映画のセリフを聞いたら卒倒するのではないか。

巻き込まれる若者もウンザリ?

 映画「復讐の記憶」は老人の復讐劇だ。

 日本統治時代に家族全員を理不尽な形で奪われた老人ピルジュ(イ・ソンミン)が自分や家族を苦しめた親日派の韓国人や旧日本軍の要人を追い詰めていく。認知症を患うピルジュは、復讐のターゲットとなる人間の名を忘れないよう、指にタトゥーを刻んでいる。

 先の親日派の教授は、もちろん復讐される側だ。そうとも知らず、教授は旧日本軍の略奪行為や慰安婦問題で韓国が不満を並べている現状を“老人たちの復讐”と表現し、「彼らがいまだ戦争を続けている」と批判。「過去に縛られた民族に未来はない」と言い切った。

 この映画の基になっているのは、カナダ・ドイツ合作映画「手紙は憶えている」(2015製作)である。こちらの映画では、年老いた主人公が第二次世界大戦でアウシュヴィッツ収容所にいたナチス兵士に復讐しようと行方を追う。これが「復讐の記憶」では復讐の対象が日本軍に協力していた親日派や日本人兵士に設定が変更されている。

 さらに韓国版では、老人ピルジュが青年インギュ(ナム・ジュヒョク)を復讐劇に巻き込むのだ。

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