欧米に比べ…「企業防衛のプロ」弁護士が訴える「物言う株主」規制の法整備

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議決権停止制度

 欧米に比べ、日本では「物言う株主」の席捲が際立つ。その理由は、法整備が遅れているからだ。例えば、上場企業の3分の1超の株式を取得する場合、市場内ならTOB(株式公開買い付け)の実施は不要。EUのようにTOB開始後、応募された全株を買い付ける義務も課されていない。しかも、株主総会で議決権を行使する株主は8割程度のため、アクティビストは4割の株式を押さえれば、企業を支配下に置くことができてしまうのである。

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 企業防衛のスペシャリスト、太田洋弁護士が前回(「週刊新潮」2023年8月31日号「MONEY」欄)からの解説を続ける。

「大量保有報告書の提出を義務づける“5%ルール”破りも辞さない“日本版ウルフパック”という企業買収の戦術が横行しています。2019年あたりから、仕手筋が秘密裏に他の買収者と手を組み、時価総額の小規模な企業の株を買い占める例が現れ始めました」

 仕手筋はわざと大量保有報告書の提出を遅らせることによって、割安な価格で市場から株を取得。合理的に共同保有者と見做される買収者であっても、あえて共同保有者から外すのだ。日本版ウルフパックの標的にされた企業は大量保有報告書で買い占めの実態を察知することができず、買収防衛策を講じる間もなく、経営権を奪われる。

「本来、期限内に大量保有報告書を提出しなかったり、虚偽の記載をすれば、金商法での摘発対象です。しかし、日本では事件化した例は稀。なおかつ、企業が自力救済する制度もありません。EUだけでなく、韓国にも“議決権停止制度”なるものが設けられている。大量保有報告規制に違反した株主の議決権行使については差止めができるとされているのです」

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