「国会議員の“バカンス”に4億円の税金が」「VIPルームに観劇チケットまで…」 驚くべき「アテンド」の内容とは?

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カジノに連れていけ

 当事者の声にも耳を傾けてみよう。「日本・カナダ友好議員連盟」の一員としてカナダに赴く自民党・衛藤征士郎衆院議員(82)は、

「一日中、向こうの議員団と議論する。観光名所などを訪れる時間もないよ」

 冒頭に挙げた松川氏らのパリ研修との「違い」については、こう主張。

「エッフェル塔を観に行ったっていいんだよ。問題は、その研修の中身。女性局がどうだったかは知らないが、私たちの議連は外務省だったり厚労省だったりの担当者から、今回のカナダ訪問に先立ってレクを受けたりもしていますよ」

 便宜供与に関しては、

「向こうの議連とテーマごとの会議をやるから(外務省や現地公館の)職員には通訳もしてもらいます。それは公務員として当然のことではないか」

 さてここで、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、こんな話を披露する。

「私が便宜供与をしたうち、国会議員で一人だけ例外的にとてもひどい人がいました。細川護煕政権の時のことで、当時の新生党所属のある議員が“モスクワにカジノがあるなんて聞いてなかった。そういう一番重要なことを外務省はどうして説明しないのか”と怒り始め、カジノに連れて行けと言い出したのです」

 やむなく佐藤氏は、議員をご希望先へ誘(いざな)ったが、

「その議員は賭けに負け続けまして、やがて“金が足りない”と言うわけです。さらに“大使館は貸し付けはしているのか”などと聞いてくる。あまりにうるさいので大使館の総括参事官に相談したところ“裏金がある。そこから3千ドル貸そう”ということになりました。その後、金は返ってきましたが、思い出の中でも一番ひどいものですね」

 外務省に長く身を置いた人物ならではの見解も。

「議員側にも問題はありますが、一方、大使館の幹部や中堅職員の中でも、幹部候補生たるキャリア組には過剰接待をしたがる傾向が見られます。なぜか。将来有望と見込んだ政治家と縁を結んで歓心を買う場として、便宜供与が一番いい機会だからです」

4億円もの税金がバカンスに

 得をするのは何も国会議員やその身内に限らない。私心を胸に秘めて接遇する公務員の側にも恩恵を享受できるチャンスがあるというわけだ。

 しかし、繰り返すがそれらはすべて、税金を元手に行われているという事実を忘れてはならない。

 予算額を両院に質すと、

「今年度分の議員の派遣旅費(外国旅費)として約2億7100万円が計上されています」(衆院事務局)

「参議院は令和5年度の議員の外国旅費として1億2665万円を計上しています」(参院事務局)

 つまりは今年度、実に総額約4億円もの血税が議員たちのバカンスに費やされることになるのである。

 しかも、在外公館の職員たちの人件費まで含めれば、その額はさらに膨らむ。

 前出の政府関係者があきれて言う。

「議員たちには調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)として毎月100万円が支給されています。せめてそれで渡航費用などを賄えばいいものを、議員側にそんな考えや事態改善への動きは皆無です。いわゆるアゴアシ付きであるうえに、在外公館から通訳まで付く。いいご身分と言うほかありません」

 上級国民としてのうまみを知った者に、その果実を手放せということ自体、土台無理な相談である。

週刊新潮 2023年8月31日号掲載

特集「『エッフェル姉さん』だけではない税金特権 外務省がおもてなし『国家議員』夏の“外遊バカンス”に便宜供与」より

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