「普通に結婚できそう」「結婚できないよね」はドイツ語に訳せない? 「結婚」にこだわりすぎる日本人

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 内閣府の調査によると、2020年の「50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人」の割合は、男性28.3%、女性17.8%だった(「令和4年版 少子化社会対策白書」)。生涯未婚率が上昇する中でも「自分は結婚できないのではないか」と焦りながら婚活に励む人も多い。ドイツ・ミュンヘン出身のエッセイストであるサンドラ・ヘフェリンさんは、日本では欧米などと比べて「結婚」にこだわる人が多いと感じるという。ドイツと日本の結婚に対する考え方の違いを、『ドイツの女性はヒールを履かない ‐無理しない、ストレスから自由になる生き方‐』(自由国民社)から一部を抜粋して紹介する。

「結婚できる」「結婚できない」の違和感

 今独身の人の中には、結婚生活を夢見ている人、どうしても結婚したいというわけではないものの、経験として一度は結婚してみたい人、結婚する気はゼロの人、とりあえず流れに任せている人……など様々です。既婚者に関しても、結婚して良かった、この人と結婚して良かった、と考える人、こんなに大変ならば独身のほうが良かった、または、違う人と結婚していればなあ、と考える人、本当に様々……。

 ドイツと違うところと言えば、日本のほうが結婚というものについて、なんとなく「しなくてはならない」という雰囲気が社会にあることでしょうか。

 時代は令和ですから、ふた昔前の昭和の時代のように、上司が出てきて、自分の部下に「この子(女の子)どうだい?」なんて言うことはなくなってきています。お見合いも少なくなりました。娘のいる親でも「結婚は娘の好きなように」と子供に任せている人が多いです。

 でもそうはいっても、心のどこかに「娘が好きな人と出会って幸せになってくれればいいな」つまりは結婚してくれればいいな、という望みを抱いている親が多いのもまた確かです。

 日本では「幸せになる」という言葉がイコール「結婚をする」という文脈で使われることが多いです。だから「幸せになりたい!」と前向きに考える女子であればあるほど婚活をし、結婚というものに使うエネルギーが大きいです。

「結婚」って「能力」ですか?

 そんな中で気になること。それは「結婚できる」という言い回しです。

 当事者が「このままで……私、結婚できるのでしょうか?」という言い方をすることもあれば、インターネットの悩み相談の掲示板に「性格の悪い誰々さんという女性が結婚できたのに、なぜ私は結婚できないのでしょうか。」と書かれていたり。この「結婚できる」「結婚できない」というフレーズはよく目にするのです。インターネットはもちろん、ふだんの女子同士の会話でもよく「結婚できる」またはその逆の「結婚できない」という言い回しを耳にします。

 でも「結婚しない」という言い方はまだしも「結婚できない」という言い方は、ニュアンスとしてちょっと気になります。

「何々ができる」とか「何々ができない」という言い方は、何か能力に長けていたり、能力が欠如したりしている際に使われがちな言葉だけに、なんだか引っかかるのです。数学ができる、数学ができない、英語ができる、英語ができない、逆上がりができる、逆上がりができない……というような「能力」をジャッジするときに使われる言葉だからです。

「結婚」って「能力」なのでしょうか?もしも結婚することがその人の「能力」なのであれば、独身で一人で生きていくことも同様に一つの「能力」だと思います。

 例えば独身で一人暮らしをしていると、同居人がいるよりも生活費が割高になりますし、親からお金の援助を受けていない限り、金銭的なことも全て本人に責任があるわけです。お金の面だけを見れば、「独身の一人暮らし」のほうが「結婚している人」よりも能力が高いという見方ができるのではないでしょうか。

「結婚できる」「結婚できない」はもしかしたら、私が上に書いたような「具体的な能力」を指すものではないのかもしれません。結婚している人が「なんとなく」一人前と見なされ、結婚しているほうが「なんとなく」親も安心する。論理云々ではなく、これは空気の問題です。

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