イギリスは高インフレで不動産バブル崩壊の危機 国民の7人に1人が飢えに直面したという指摘も

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「英国経済はリセッション入りする」との警戒感

 イングランド銀行(英国中央銀行)のアンドリュー・ベイリー総裁は7月9日、「インフレ目標を2%から引き上げる必要性はない」と述べた。

 イングランド銀行は、英国のインフレを抑制する取り組みに苦戦している。6月の消費者物価指数(CPI)は8.7%と目標(2%)の4倍を超えており、主要7カ国(G7)で最も高い。

 このため、イングランド銀行は6月、予想外の0.5ポイントの利上げを実施し、政策金利を5%に引き上げた。市場関係者の間では「政策金利が6.5%と25年ぶりの高水準にまで引き上げられ、これにより英国経済はリセッション(景気後退)入りする」との警戒感が広がっている。

 リセッションを回避する観点から「インフレ目標を3%に変更し、政策金利の引き上げを小幅にとどめる」との提案が出ていた。だが、ベイリー総裁の発言は「目標を変更した場合は中央銀行の信頼性が損なわれる」ことを理由に、それを拒否した形だ。

「強欲インフレ」は政治問題化

 ベイリー総裁が6日「一部の小売業者が顧客に対して過剰請求している証拠がある」と述べたように、英国では「強欲インフレ」も問題になっている。資源や穀物などの市況に関係なく、企業がインフレを口実に利益を求めて値上げに走る行為のことだ。

 英フードバンク慈善団体「トラッセル・トラスト」が6月28日に公表した調査結果によれば、英国民の7人に1人に当たる約1130万人が昨年、生活費の高騰などが原因で飢えに直面したという。

 強欲インフレで槍玉に挙がっている食品企業は「エネルギー高が続く状況下で価格転嫁が十分に出来なかったため、失った利ざやを補うために価格を引き上げている。適正な価格見直しだ」と主張している。しかし、「便乗値上げが横行している」との批判は高まるばかりだ。

 すでに強欲インフレは政治問題化しており、競争・市場庁は5月中旬から、食品企業などが価格高騰により不当な利益を享受していないかの調査を実施している。

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