各界の「現役アラ100」を14人取材した著者に聞く 5つの共通点と多くの人が食べていたもの

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長寿の秘訣は「歩く」と「納豆」

 しかし、いくら丈夫な身体を授かっても、それなりの健康法や食事があってこそではないのだろうか。

「そこですよ、なるほどと思ったのは。まずは、みなさん足腰を鍛えている。TV番組『料理の鉄人』でおなじみの和食料理人、道場六三郎さんは、平日でも4,000~5,000歩は歩くうえ、いまでも週に2回、ゴルフコースに出て1万歩以上を歩いている。喜劇役者の大村崑さんは86歳でスポーツ・ジムに入り、いま健康年齢は55歳だそうですよ」

 そしてもうひとつが、ある「食べ物」だった。

「ヨーグルトも人気でしたが、かなりの方が、納豆を毎日食べていました。郷土料理研究家の青木悦子さんに教わったのは、納豆に南高梅とわさびを入れる食べ方で、これは私も試してみましたが、とてもおいしくて健康によさそうでした。また、冒険家の三浦雄一郎さんは、サバ缶に卵と納豆を入れて、かき混ぜて食べているというんです。これは私も初めて聞く食べ方でした」

 好奇心旺盛な木村さん、これも取材後、さっそく挑戦してみたが……。

「あえて、どうだったかは申しません。すごい食べ物でした(笑)。でも三浦さんは、山登りの際には、干した納豆を必ずもっていくそうですよ」

 もっとも長時間にわたった取材は、『豊かさとは何か』(岩波書店)などで知られる、経済学者の暉峻淑子さんだった。

「4時間、休みなく語られました。なにしろ経済学の専門的な話なので、さすがにヘビーでしたが、その圧倒的な話力に打ちのめされました。実は暉峻先生は、私の専門分野でもある絵本の世界でロングセラー名作を生んでいます。『サンタクロースってほんとにいるの?』(福音館書店、1982年刊)です。こんなに長く読まれているのに、なぜ続編を出されないのかをうかがいました。すると先生は『子どもにとって本はバイブルだから、大人になって思い出してくれる本を1冊だけ作りたかった。ふつう、恋人は1人でしょう』とおっしゃった。カッコいい、さすがだなあ、と恐縮してしまいました」

 こうして14人の“アラ100”に会ってきた木村さんだが、実は「15人」にしたかったという。

「15人目に登場していただきたかったのは、『車のいろは空のいろ』(ポプラ社)などで知られる91歳の童話作家、あまんきみこ先生です。児童図書出版に長年携わってきて、あまん先生には学ぶところが多くありました。正式に取材は受けていただけませんでしたが、京都在住の先生と、お電話で長くお話しすることができました」

 あとがきに、電話で語ったあまんさんの言葉が載っている。それは、絵本作家として第二の人生を歩みはじめた木村さんの今後を照らしてくれる言葉でもあった。実は本書は、“アラ100”を訪ねながら、60代半ばを迎えた木村さん自身が、自分の道を見つけようとする旅でもあったのだ。

「いつか私も、30歳年下の記者から、100歳の生き方についてインタビューされたい、そんな思いにさせられた9か月の旅でした」

 本書『100歳で夢を叶える』は、会社をやめて今後に迷っている60歳代が、次の夢を叶えるための、最適なガイドブックなのかもしれない。

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍

デイリー新潮編集部

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