俳優「田村亮」の父親は時代劇の大スター・阪東妻三郎 没後70年で現存する劇映画日本最古のネガで修復された「雄呂血」がテレビ初放送

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 ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第20回は、阪東妻三郎(1901~1953)の息子にして田村三兄弟の末弟・田村亮(77)だ。

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 田村亮は、映画、ドラマ、舞台と、半世紀以上にわたって多くの作品に出演しているが、「もともと俳優になる気はなかった」と聞いて少し驚いた。

 なにしろ父親は、大正から昭和にかけて活躍した時代劇の大スター“バンツマ”こと阪東妻三郎。自らプロダクションを立ち上げ、京都・太秦に広大な自社撮影所を建設。その近くの広い屋敷で育った末息子の亮も、二人の兄・田村高廣(1928~2006)、田村正和(1943~2021)とともに、自然の流れで俳優になったと思っていたのだ。

 父・妻三郎が亡くなったのは、末っ子の亮がまだ7歳のとき。

 1965年、亮は高校生のとき、NHKが「阪東妻三郎13回忌記念作」として企画した父の主演映画「破れ太鼓」のドラマ版(主演・二代目尾上松緑、脚本・山田太一)に二人の兄とともに出演。これが俳優になるきっかけとなった。

 この他、三兄弟の共演作では、正和が主演の72年のドラマ「眠狂四郎」(関西テレビ)の第6話や83年のドラマ「お毒見役主丞 乾いて候」(フジテレビ)がある。「乾いて候」では、高廣が正和(腕下主丞)の父親・将軍吉宗役。亮はナレーションを担当している。さらに、90年の大型時代劇「勝海舟」(日本テレビ)では主演の正和が途中で病気になり、急きょ亮が引き継ぐことに。長時間ドラマの前半が正和、後半が亮、兄弟でのWキャストとなった。ここでも高廣は勝海舟の父・小吉役で出演。弟たちを支えた。

飄々とした役も

 とにかく兄弟の仲が良く、三人で清酒のコマーシャルに出たことも。ただし、「名月ですな」「酒ですな」というナレーションをバックに、三人は一升瓶とおまけのお洒落小鉢を抱えてニコニコしているだけ、声は出さないという斬新な演出だった。

 田村亮が長く演じた役では、戦前戦後の大阪を舞台にしたド根性商人ドラマ「どてらい男」(関西テレビ)の尾坂昭吉や「暴れん坊将軍」(テレビ朝日)の大岡忠相が印象に残る。「どてらい男」では「わいはやったるわい!」と猪突猛進する主人公・山下猛造(西郷輝彦)のよき相棒。「暴れん坊将軍」では城を抜け出して悪人たちを「成敗!」する将軍・吉宗(松平健)を助ける。型破りな主人公をサポートする誠実な人物というイメージだ。近年は東山紀之が主演の「大岡越前」シリーズ(NHK BSプレミアム)で、大岡忠相(東山)にプレッシャーをかける老中・松平左近将監を演じて敵役という新たな顔を見せている。

 舞台出演も多く、私は近年の出演作をほとんど見ている。川中美幸公演の芝居「富貴楼お倉~ジャスミンの花咲く頃~」では、明治初期の横浜を舞台に、伊藤博文らが集まる料理屋を切り盛りするお倉(川中美幸)の優柔不断で遊び人のちょっと困った夫を飄々と演じて面白かった。取材の流れで、なぜか私は差し向かいでお好み焼きを食べることになったが、誰にでもきさくに声をかけ、スタッフや共演者から頼りにされていることがよくわかった。

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