中田敦彦の発言に見る「テレビへの未練」と「知性コンプレックス」 “笑われること”に耐えらないプライドの高さ

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「キャラ」「人柄」など数値化できないお笑い界の変化 あっちゃんのテレビ出演は悪手では

「松本人志さん以外の価値観を持つ」芸人たちは、本当に評価されていないのだろうか。最近は違うムーブメントも起きている。松ちゃんが審査員をしていない2015年R-1ぐらんぷりの決勝進出者である、とにかく明るい安村さんの再評価は最たる例ではないだろうか。海外からの逆輸入という点だと、ウエスPさんもSNS総フォロワー数は松ちゃんをしのぐ。他にも松ちゃん派閥ではないが息の長い芸人として、阿佐ヶ谷姉妹も当てはまる。こちらも松ちゃんが審査員をしていないTHE Wの覇者であるが、昔のキレキレの松ちゃんだったら斬って捨てていたのではと思う。

 つまり松ちゃん的お笑い一強時代は弱まり、有吉さんの番組での再評価や、海外やSNSから人気に火がつくなど、権力の分散は起きてきているといえる。むしろ賞による優劣よりは、「キャラとして推せるか」「応援したくなる人柄か」という、数値化できない基準で見る人が増えてきた。そしてその変化を、納得できるかどうかは別として、松ちゃん自身が最も感じているはずだ。だから彼はあえて、時代と逆行しても数値化できる基準を保ち続けるという使命感で、審査員を引き受けている部分もあるだろう。

 一方で中田さんの発言は、お笑い界を案じている体裁を取りながら、「俺が思うほど認められないのは、松ちゃんに評価されなかったせい」という個人的な不満を感じる。しかしそれは裏を返せば、今のテレビの視聴者にとって、「キャラや人柄を応援したくない」と、突き付けられているということではないだろうか。YouTubeという自分の土俵では我が物顔に振る舞えても、ファン以外の多くの人間が見るテレビ番組で同じようにすれば、彼の狙い以上に敵を作るだけ。テレビタレントとして生きるなら、それは損だよと松ちゃんは言いたかったのではないだろうか。

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