中日が最下位独走中 立浪監督に誰も口を出せない…あまりに苦しすぎる“現状”

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編成を巡っても“不用意な発言”

 そして、立浪監督の“発言問題”は自身の管理する現場だけにとどまらない。本来フロントの業務である編成についても、不用意な発言が目立つ。

 昨年のドラフト会議から2週間前には、1位候補として5人の選手の名前を挙げている。結局、この中には1位指名した仲地礼亜(沖縄大)は入っておらず、他球団をかく乱する作戦だったという声もあるが、監督がここまで多くの選手の具体名をあげるケースは、極めて“異例”だ。

 立浪監督は、その後の10月11日には1位指名の選手について公表しないと発言したが、結局はドラフト会議前日の同19日に「仲地を指名する」と発表している。実際に候補となる選手の視察にも赴いていたが、他球団のスカウト陣からは、立浪監督の発言は不要だったのではないかという声が出ていた。

 また、昨年オフには、京田を含めてトレードに動いたが、「2番手捕手を狙っている」と明言。最終的には、加藤匠馬をロッテから無償トレードという形で獲得しているが、監督の発言によって、他球団から足元を見られた可能性があると、一部の他球団の編成から指摘されている。

立浪監督に“物申せる人”がいない

 不用意な発言は、これだけはない。大砲候補として獲得した新外国人のアキーノについても、立浪監督は『本当はブリンソン(巨人)が欲しかった』などと発言している。これが本音だったのにせよ、選手のモチベーションを削ぐ発言であることは否めないだろう。アキーノは、長距離砲の役割を果たせず、打率.154、本塁打1本と低迷し、二軍暮らしが続いている(5月24日終了時点)。

 なぜ、ここまで立浪監督の発言は波紋を呼ぶことが多いのだろうか。ある球団関係者は、以下のように指摘する。

「基本的にコーチもフロントも立浪監督に“物申せる人”がいないというのが一番の原因ではないでしょうか。球団としても『チーム再建の切り札』として招聘した経緯もあって、立浪監督のやり方に口が出せないということもあります。ですが、それ以上に大きいのは、立浪監督のキャラクターのように感じます。あるOBは、現役時代から(立浪監督は)チームの中でも別格の存在で、監督やコーチ、先輩の選手からも何か言われているところを見たことがなく、誰も何も言えない雰囲気だったと話しています。“ミスタージャイアンツ”の長嶋茂雄さん(終身名誉監督)も、(立浪監督と同じような立場で)そうだったのかもしれませんが、巨人のフロントは、何とか勝たせようというバックアップがありました。今の中日は、当時の巨人のような圧倒的な資金がなく、補強にも限界がある。こうした中で、誰も監督に意見できないことが、チームをさらに苦しい立場に追い込んでいるのではないでしょうか」

 立浪監督は3年契約であり、任期は来シーズンも残っている。このまま最下位を独走しても、立浪監督にチーム再建を任せ続けるのか、それとも……。球団の“決断”に注目が集まる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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