人口増加率6年連続トップ「流山市」は何がスゴい? 新設中学校の校則が全廃に

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 少子高齢化で経済の衰退も叫ばれる日本の中で、人口は増え、外資系が進出、街も活気づいているという地方自治体がある。千葉県流山(ながれやま)市だ。いったい、何が違うのか。ジャーナリストの大西康之氏と、地域エコノミストの藻谷浩介氏が、この街の“秘密”について語った。

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〈6年連続で人口増加率全国トップに立つ、千葉県流山市の魅力と秘密に迫った『流山がすごい』(新潮新書)。著者の大西康之氏と、ベストセラー『デフレの正体』で人口と経済の関係にいち早く注目した藻谷浩介氏が、岸田政権の最重要課題として浮上してきた少子化問題や、これからの地域のあり方について語り合った。〉

――『流山がすごい』は、駅前ビルの仮託児所に園児を送っていくと、そこから先は市が各保育園までの送迎をやってくれる「送迎保育ステーション」をはじめ、「子育て中の共働き世帯」に的を絞った政策を打ち出した結果、全国700以上の市の中で6年連続、人口増加率トップを達成している千葉県流山市の実像に迫った作品です。

 また、「子育てしやすい街」には、第一線で活躍する多くの人々が移住し、しかも女性の創業への支援も手厚いため、市内で新しい雇用が生まれています。そのほか二子玉川(東京・世田谷区)を開発したデベロッパーや、世界的な物流不動産企業なども進出し、街が活気づいています。その結果、2005年に約15万人だった人口は最近、21万人を突破しました。

 藻谷さんはどうお読みになったのでしょうか。

東京は「昭和の、巨人軍中心の野球界のよう」

藻谷 『流山がすごい』は毎日新聞の書評で取り上げさせてもらいました。私が取り上げないで、誰が取り上げるのかという勢いでね(笑)。特にあとがきに書いてあることに、「まさにその通り」と膝を打ったのです。

大西 「彼ら(霞が関や丸の内の人々)から情報を得て記事を書く自分も日本を動かす一員だと勘違いしていた」「中央はすっかり機能不全を起こしている。この窮状を変えるのは市民であり市政ではないのか」といったあたりでしょうか(笑)。

藻谷 いま世界の標準は、グローカル(グローバルとローカルを合わせた造語)ですからね。世界的な視野を持ちつつ、地元に根差し、国際人兼地域人として行動することが、経済を伸ばし、人材を育てるのです。

 その反対が、「ナショナル」な街・東京です。ものごとを全国一元で捉える人たちが、全国一元の政治行政やビジネスをしている。彼らには地域人の自覚がなく、かといってグローバルな視野もない。まるで昭和の、巨人軍中心の野球界のよう。だから日本は成長しない。

 大西さんの場合は、もともと流山にお住まいで、赴任先のイギリスから帰国してこの本を書かれた。日経新聞の国際経済報道の第一線にいた記者が、グローカルな視点で自分の地元を描いた。だからすごいのです。

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