歓迎されない「天下り官僚」と高評価の「元官僚」はどこが違うのか【国交省OB人事介入の闇】

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 自身のバックをチラつかせながら、「副社長にしろ」「社長にしろ」とポストを要求するという、ヤクザ顔負けの行状が明るみに出た、国交省OBらと「空港施設」社の問題。

 いまだに続く「天下り」の弊害、当事者の問題行動については前回お伝えした。しかし、もちろん官僚にも再就職の自由はあるし、能力が高い人材がいることも事実。

 その能力を前向きに活かす道はないのか。

 長年、霞が関、永田町で取材してきたジャーナリスト水沢薫氏によるディープレポートである。(全2回の2回目)

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活躍する「元大物官僚」たち

 前回は、国交省OBはじめ、「招かれざる客」となった天下り官僚について主に触れてきた。ただ、こうした「残念な官僚」ばかりがはびこっているわけではない。優秀な官僚はマネジメント力に優れており、民間でも活躍できる余地はある。

 例えば「10年に1度の大物財務次官」と言われた勝栄二郎氏は、自身のネットワークで大手IT企業・株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に転じ、社長を務めている。直近では元金融庁長官・遠藤俊英氏が、ソニーフィナンシャルグループ(FG)の社長に6月に就任する例がある。両者については、「老害」うんぬんといった声は聞こえてこない。

 遠藤氏は2020年に退官した後、ソニー本体のシニアアドバイザーを務め、6月に社長に就任する。背景にはChatGPTなど急速に進化するAI技術にソニー本体が危機感を募らせたことがあるという。ソニーFGは生命保険を中心に損害保険、銀行からなる総合FGだが、ソニーグループの中では隅っこの存在でもあった。だが時代の急速な進化に追いつくため、グループ内の資源を融合させ、次世代の戦略を練る方向に変わった。その一環での遠藤氏の登用だという。

 遠藤氏は歯に衣着せない物言いで知られ、退官後には様々な企業の顧問やアドバイザーを務めてきた。官と民、両方の知見を備えた遠藤氏が担うのはグループ内の融合と10年後を見据えた戦略だ。傘下のソニー生保は、ライフプランナーによる収益構造が確立していることで知られる。このため遠藤氏は、経営は各事業会社に任せ、ソニー本体におけるFGの位置づけと将来像を描くマネジメントをかじ取りするとみられる。

 霞が関には、退官後2年以内は、出身母体の関連業界に再就職してはならないという内規がある。OBによる過度の圧力を排除するためだが、遠藤氏の就任は2年を経ており、また霞が関の紹介によるものではないため「天下りには当たらない」(主要官庁の人事担当者)という。この人事に対して金融業界には「ソニーは本体のゲーム事業などに資源を集中するため、FGを売却する可能性がある。遠藤氏の就任は、その際の金融当局に対する『重し』になってもらうため」(大手金融幹部)とのうがった見方もある。いずれにして大物OBの手腕が問われている。

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