「働かない社員」がいた方が企業は存続する? 数理物理学者が提言「社会には無駄な3割が必要」

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 日々の些事から離れられるゴールデンウイークは、またとない「学び」のチャンスでもある。折しも、連休後は「ポスト・コロナ時代」の幕開きとなる。疫禍を経て、われわれの社会は、そして組織はどう変わるべきなのか。数理物理学者による異色の「無駄学組織論」。

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 私は無駄が大嫌いです。

 その最たるものといえば渋滞。自分の意のままに移動できない渋滞ほど苦痛なことはなく、なぜ渋滞という無駄が生じるのか、どうすれば渋滞を解消できるのかを、数理物理学的に検証した『渋滞学』という本を書いたほどです。

 さらには、そもそも渋滞をはじめとする無駄を削るにはどうすべきなのかをとことん突きつめ、『無駄学』という本まで出してしまいました。

 時間の無駄、労力の無駄、お金の無駄。世の中はありとあらゆる無駄に溢れています。私に限らず多くの人がどうにか無駄を排除したいと考えていることでしょう。企業人であれば、組織の無駄をできるだけ省きたいと考えるのは当然です。

 しかし、そこには落とし穴が潜んでいます。果たして、「無駄」とは一体何なのでしょうか。

無駄に関する「二つの基準」

〈こう問いかけるのは、数理物理学や渋滞学を専門とする、東京大学大学院工学系研究科の西成活裕(かつひろ)教授である。

 ゴールデンウイーク明けの5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「2類相当」から「5類」に引き下げられ、世の中はようやく「日常」を取り戻すことになった。

 しかし未曾有の疫禍を経験した以上、「かつてと同じところ」に戻るのはいかにももったいない。私たちは未知のウイルスと対峙し、新しい生活様式を余儀なくされたことで何かを学んだはずだ。であれば、コロナ前よりも賢くなっていなければならない。すなわち、グローバリズムにせつかれた「コストパフォーマンス至上主義」への回帰はあり得ないことになる。そこで無駄学の登場だ。〉

 無駄を削れ、無駄をなくせ。とりわけ右肩下がりの現代日本においては、どこの企業・組織でも徹底的な無駄排除が進められていると思います。しかし、これが簡単に思えてなかなか難しい。それは無駄に関する「ニつの基準」を押さえられていないからです。

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