アカデミー賞6部門ノミネート 話題の映画「TAR/ター」を完全制覇するための5つのポイント

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(1)冒頭でターがある男性と会食するシーン。

「この男性、エリオット・カプランと名乗っていて実業家のようですが、やたらと音楽に詳しく、“いったい何者?”と感じる人が多いと思います。彼は、投資情報出版社の経営者だったギルバート・キャプラン(1941~2016)がモデルと思われます。マーラーの交響曲第2番《復活》の病的なファンで、あるとき、財力にものをいわせてプロのオーケストラを雇い、自ら指揮するコンサートを開いたのです。これが意外や素晴らしい演奏で、以来、《復活》のみのセミプロ指揮者として世界中を飛び回ることになった。ロンドン交響楽団やウィーン・フィルを指揮したCDは名盤としてベストセラーになったほどです」

 映画では、その彼が音楽財団を運営し、ターをバックアップしている設定だ。

「ちなみに、同じく冒頭でトーク・ショーのイベント・シーンがあります。ここでのインタビュワーはアダム・ゴプニクといって、雑誌『ニューヨーカー』のライター本人です。美術や音楽に精通している人で、あのイベントも、毎年10月に開催されるニューヨーク・フェスティヴァルそのものです」

(2)中盤で、ターが若い女性奏者を強引にソロに起用しようとして、オーケストラ内に不穏な空気が流れる。

「これは1982年に発生した“ザビーネ・マイヤー事件”がモデルのようです。あの帝王カラヤンが、当時23歳の女性クラリネット奏者のマイヤーを強引にベルリン・フィルに入団させようとしたのです。それまで女性団員はいなかったせいもあり、団員の猛反対で一触即発に。結局マイヤー自身が辞退し、おさまりましたが」

 要するにこの映画のターは、帝王カラヤンがモデルともいえるのだ。マイヤー事件がどうなるのか。それは観てのお楽しみ。ちなみに、現在ベルリン・フィルには20数名の女性団員がいるという。

次ページ:(3)さすがに本物のベルリン・フィルは登場しないけれど…。

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