AIに精通する起業家「松本勝」インタビュー「Chat GPT社会を生き抜くためにこそデザイン思考が必要です」

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 昨年秋頃から、俄に人口に膾炙し出したオープンAI「Chat GPT」に、今、注目が集まっている。画面に質問を打ち込むだけで、AIが生成した文章が返ってくるのだが、これまでのAIとは違い、その文章の完成度は、人間が作成したものと比べても遜色のないもの。あたかも専門家とチャットで話しているような感覚に陥ってしまう。そんな「Chat GPT」、研究機関や大学で、論文作成の際に使われることなどが問題として指摘されてきた。が、それだけでなく、このサービス、今度はビジネスの世界にも大変革を巻き起こそうとしている。

 今後、どんなタイプの仕事が「Chat GPT」に取って代わられていくのか。そしてどうすれば、そんなAI時代に生き残ることができるのか。そのヒントは、「デザイン思考」にあるというのだ。今年2月、「デザイン思考2.0」(小学館新書)を上梓し、話題となった起業家の松本勝氏(47)に、話を伺った。

メガバンクも導入を検討

 松本氏は1975年大阪府生まれ。東京大学大学院修了後、ゴールドマン・サックスに入社。株式トレーダー、金利デリバティブトレーダーを経て、2010年、人工知能を用いた投資ファンドを設立。2014年には、VISITS Technologiesを設立し、人の創造性やアイデアの価値を定量化するアルゴリズム「CI技術」を開発、日米で特許を取得。企業や行政、教育機関のイノベーションやDXの支援を行っている。

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松本 勝氏(以下、松本)「Chat GPT」の登場が今、世間に大きな衝撃を与えています。現在は、教育分野での使用についての是非が議論され、注目を浴びていますが、まもなく、ビジネスの世界にも浸透してくるでしょう。すでにメガバンクがChat GPTの導入を検討しています。これまでもさまざまなAIが開発され、世に出てきましたが、今回の「Chat GPT」は、そのどれと比較しても優秀ですね。かつて、ブルーカラーの方々の仕事の多くが、産業用ロボットに代わっていきましたが、同じ現象が、いよいよホワイトカラーの働くオフィスでも起きることになるでしょう。

――AIのシステムを、企業が導入するということにイメージが湧かないが、例えばGoogleの検索システムと大きく違うところは。

誰よりも物知りなAI

松本 Googleで検索すると、ご存じの通り、一般的な情報はどんどん出てきますが、当然ながら、企業の内部情報などは含まれません。もちろんChat GPTも、一般に流布されている膨大なデータから文章を生成しています。が、さらにそこから、企業や組織ごとに、ローカライズし、カスタマイズすることが可能なのです。しかも比較的簡単に社内のあらゆる情報を学習させ、その会社に合ったChat GPTを育てることができる。すると、社内のことを全部学習している、誰よりも会社について物知りなAIが誕生するというわけです。いつ、どこからでも、カスタマイズされた「Chat GPT」に話しかければ、なんでも教えてくれますし、解決策を提案してくれるでしょう。

――会社のあらゆるデータ、あらゆるプロセスを熟知しているChat GPTに聞けば、最適解がもたらされるようになる。

松本 そうですね。今後は、ある程度パターン化された作業的な仕事、実務はもはや人間がやるより、AIの方がミスもなく、正確にこなしていくことになると思います。かつて電卓が登場した時と同じです。とはいえ、電卓が出てきたからといって、それで仕事がなくなったわけではない。仕事の内容が変化していくというだけです。その変化についていけず、仕方なくずっと「電卓」と張り合おうとしていく人は、残念ながら淘汰されることになるでしょう。

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