「鬼滅の刃」「スラムダンク」「名探偵コナン」… 実写を尻目にメガヒットが続く「劇場アニメ」知られざる“ヒットの構造”

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「アニメ大国」アメリカも席巻

 この傾向は“映画大国”アメリカでも同様だ。「ドラゴンボール」シリーズや「僕のヒーローアカデミア」、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行が好調だった一方で、もともとアメリカは自国のアニメ映画の人気も根強い地域である。ディズニーやピクサー、イルミネーション、ドリームワークスといった大手スタジオ製作のアニメーション大作が並び、わざわざ海外作品を上映しようという意識は低かった。

 だから日本の劇場アニメの大半は、少し前までアメリカでは日数を限定した「イベント」として上映されてきたに過ぎない。ところが、いまでは『鬼滅の刃』のように週末興行ランキングで1位を獲るような作品も現れるようになった。この快挙も、実はこれまでのイベント上映が“巨大化”したものともいえ、体験型消費的な楽しみが広く共有されることで、興行ランキングで上位となって表われたともいえるのだ。

 従来の映画とは異なる「体験」を提供できるなら、日本の劇場アニメの海外での可能性や伸びしろはまだまだ大きいだろう。クオリティの高いアニメーション映像の輸出だけでなく、映像に付随する体験まで変える――。ここにこそ、近年の日本アニメの強さがある。

 特典やリピート戦略、ライブビューイングなど、映画鑑賞を起点として楽しみ方が縦横に広がっていく……。これまでの映画体験とは異なるため、“邪道”と感じる人がいるかもしれない。しかし平均的な日本人の映画鑑賞は一年に1本か2本というのが相場のなか、そもそも映画館に足を運ぶことは文字どおり「特別な出来事」だったはずだ。裏を返せば、本来、映画が持つ「祝祭感」を取り戻したに過ぎないともいえ、アニメの大衆化を追い風に、劇場アニメの大型ヒットは今後もしばらく続くと考えられる。

数土直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に国内外のエンターテインメント産業に関する取材・報道・執筆を行う。大手証券会社を経て、2002年にアニメーションの最新情報を届けるウェブサイト「アニメ!アニメ!」を設立。また2009年にはアニメーションビジネス情報の「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ、編集長を務める。2012年、運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月に「アニメ!アニメ!」を離れ、独立。

デイリー新潮編集部

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