増加する主婦のひきこもり……夫から「家事や育児をおろそかにしている」と怒鳴られ、追い詰められた「49歳女性」の証言

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子育て女性が受ける社会的不利益

 きみこさんは、夫の仕事の都合に合わせて転居を繰り返していたため、地縁のない土地で相談できる友人もできなかった。夫の言いなりのまま暮らしは7年続き、自分を失いかけていくことに。

「自分さえ耐えていれば、自分さえ不満を言わずに夫に応えていれば円満だから。夫の収入と同じぐらい働けるかというと育児もあって難しかったですし、言いなりになるしかないですよね。」

 追いつめられ、「生きるか、死ぬか」の精神状態に陥ったきみこさん。

 限界に達したきみこさんは、夫のもとを逃げ出す決意を固める。娘にも自分と同じようなモラハラとも言える言葉の投げかけが始まったからだ。

 シングルマザーとなり、ケアマネージャーとして働き始めたが、今度は子育てを担う女性にとっての社会的な不利益を突きつけられる。育児を理由に、正社員としての雇用はできないと言われたのだ。

「みんな正社員なんですけど、私だけ娘が学童保育の関係で祝日は働けないと伝えたら、週5勤務だけど契約社員でって言われたんです。ボーナスはないですし、退職金も当然ない。自分の意見が言える職場じゃなかったんですよね。サービス残業ばかりでした」

 1年ごとに契約更新がある弱い立場で、無理な仕事を頼まれても断ることもできなかった。小学校低学年の娘を毎晩遅くまで1人で留守番させ、昼も食べずに働く日々。2年間が経ったころ、身体も心も疲れ切り、仕事を辞めざるを得ない状況になった。

「もう疲れちゃって何もできない。娘の事もできないんですよね。だから学校のお知らせも読めないみたいな。本当に忙殺ですよね。自分の家がごみ屋敷みたいな状態で……」

 結局、主婦に戻ったきみこさん。食欲不振、めまいなどの体調不良も続き、自宅に閉じこもる日々だ。自信を失い、将来への不安や焦りを募らせている。

「役に立たない人間は、だめなんじゃないかみたいな。生産性のない人間とかは、いてはいけないんじゃないか。社会人として失格じゃないかなって。存在をなくしてしまえばいっそ楽かなって思います」

 きみこさんは、今、外の世界とつながっている娘の笑顔を支えに日々暮らしている。食卓に座ると、目に入る壁に額縁が飾られている。そこにはこんな言葉が。

「きみがいてくれてうれしいよ」

 この言葉に元気をもらいながら、社会と再びつながれる日を迎えたいと思っている。

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