おひとりさま急増で「相続人のいない遺産」「遺体」はどうなる? 人ごとではない終活最新事情

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 高齢者世帯のうち約半数が単独世帯だとか。なかには離れて暮らす身内がいる人も多いだろうが、生涯未婚率の急上昇を考えると、今後、身寄りのない高齢者が増えるのは確実。彼らが亡くなった時、どうなるのか。専門家が語る「おひとりさま」の終活の仕方とは。【武内優宏/弁護士】

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〈日本では「おひとりさま」が爆発的に増えている。厚生労働省の国民生活基礎調査(2021年)によると、主に65歳以上の高齢者で構成される「高齢者世帯」のうち、一人暮らしの単独世帯は約半数の742万7千世帯で、1986年の128万1千世帯の6倍近い。今は夫婦で暮らしていても、伴侶が亡くなれば、いずれは一人暮らしになるという人も多いはずだ。

 そもそも、結婚しない人も増えている。生涯未婚率は男性28.3%と3割に迫る勢い。女性でも17.8%もある。気になるのは、こうした身寄りのない人が亡くなる際、遺産や葬儀、遺品整理などはどうなるのかという点。当事者であれば、なおさら気がかりだろう「おひとりさま」の相続や“終活”の問題に詳しい弁護士の武内優宏氏に話を聞いた。〉

遺産はどうなる?

Q1 最近増えている、未婚で子供もいない「おひとりさま」の場合、遺産の相続はどうなるのでしょう。

 相続の範囲については配偶者や子がいれば彼らが対象となるのですが、いずれもいない場合、親が相続人になります。両親が亡くなっていても祖父母が存命であれば、祖父母が相続人となります。しかし、ご質問の趣旨の、高齢者のおひとりさまが亡くなった場合は、両親、祖父母ともに亡くなっているでしょうから、兄弟姉妹が受け継ぐことになります。兄弟姉妹が亡くなっていると、おい、めいが代襲相続という形で相続します。このおい、めいまでが法定相続人の範囲で、それ以外は相続の権利を有していません(掲載の図を参照)。

――相続人がまったくいないと、どうなりますか。

 その場合、遺産は民法の定めにより、最終的に国庫に帰属することになります。会計上は、裁判所の雑収入として計上されます。最高裁判所のデータによると、国庫帰属財産は、2009年度に約181億円だったのが、2021年度には3倍以上の約647億円にまで急増しているのです。もったいない話だと思います。

何らかのメリットがなければ…

 ところが、相続人がいない財産の全てが国庫帰属しているわけではありません。国庫帰属のためには「相続財産管理人」が必要となります。相続人がいない場合(相続人全員が相続放棄をして結果として法定相続人がいなくなった場合も含む)、家庭裁判所は、申し立てにより相続財産管理人を選任し、この相続財産管理人のもとで遺産を清算することになります。

 その際、申立人は予納金を家裁に支払わなければなりません。私が扱った事例では100万円でした。100万円も払うメリットがある人は限られています。例えば、被相続人(亡くなった人)に対して債権がある人です。何らかのメリットがなければ、わざわざ申し立人になるような人はいません。

 また、「特別縁故者」が申し立てすることがあります。特別縁故者とは、法定相続人がいない場合に、特別に相続を受ける権利が発生する人のこと。被相続人と同居して同一の家計で生活していた内縁配偶者や、被相続人に対して対価を得ずに献身的に介護を行った人などが特別縁故者になります。彼らが財産分与の権利を得られるかもしれないと思えば、相続財産管理人の申し立てをすることでしょう。

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