あわやレース開催中止の危機 「JRA厩務員ストライキ」の背景にある“賃金格差”

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 果たして本当にレースが行われるのか――。3月18日(土)、19日(日)の中央競馬の開催を巡って、競馬ファンの脳裏には、そんな不安がよぎった。というのも、3月17日(金)、JRAの厩務員や調教助手などが加盟する労働組合が、彼らの賃金を規定する日本調教師会と賃上げの団体交渉を行ったものの、交渉は決裂。結果、翌日からの2日間の開催業務を行わないという、ストライキに打って出たのだ。ストが実施されたのは実に24年ぶりのこと。売上好調なはずの競馬界でなぜ、ストという事態が起きてしまったのか。

調教師自ら馬を引くシーンも

 蓋を開けてみれば、ストライキこそ敢行されたものの、競馬は2日間とも開催され、ひとまず競馬ファンはほっと胸を撫で下ろした。とはいえ、なぜ開催中止の危機は回避できたのか。その内幕を、スポーツ紙デスクが語る。

「実は厩務員の労働組合は1つではなく、東西合わせて4つあるのです。そのうちの1つで、組合員数が最も多いところが、17日の段階で交渉から抜けてしまい、残された3団体に加盟する組合員がストを敢行したのです。一方JRAは、非組合員のスタッフや調教師にレース当日の作業をお願いすることによって、労働力の不足分を補えば開催に支障はないと判断。2日間とも無事にレースを行うことができたというわけです」

 実際、18日の各競馬場のパドックでは、調教師が自ら馬を引くシーンや、他厩舎の馬を引いて歩く調教師の姿など、競馬ファンにとっては珍しい光景もあった。

 さらに、

「その日のうちに、残った3団体もストライキを解除し、翌19日には通常開催に戻りました。とはいえ、交渉が妥結したわけではなく、1団体が抜け、開催もできることになって、ストを続行する価値がなくなってしまったというだけ。労組側は今後も交渉は続けていく、とのことでしたが、労働者の最後の手段ともいえる“ストライキ”が使えないとなると、交渉が進展するとは思えませんね」

さすがにそれはおかしい

 では、そもそも、厩務員たちがストライキを行った背景には何があるのか。そしてなぜ、ストは破られたのか――。JRA関係者がその訳を明かす。

「原因は、2011年に行われた厩舎制度改革です。この時期、日本経済は悪化の一途を辿っており、そのあおりをうけて、馬券の売上も対前年比で94%の2兆2935億円と、落ち込んでいました。このままでは競馬の存続が危ぶまれることになると案じた上層部が繰り出したのが、預託料(馬主が、馬を預けている厩舎に支払うお金)を安くすること。そうすれば、馬主が競走馬を買いやすくなり、競馬の存続に繋がると考えたのです」

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