この3年間の日本は「監獄だった」 マスクをしない者、ワクチンを打たない者は犯罪者扱い(中川淳一郎)

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 この3年間は監獄・地獄にいたと考えると合点がいく。監獄とは罪を犯した者を罰するとともに、反省を十分させ、罰を受ける時間(懲役)を更生まで過ごさせる場所である。看守は常に囚人の生活様式・態度に命令をし、指導をする。正月には特別料理を出してやり、少しだけ温情を見せ、「あなたたちはこういった素晴らしい日常をあなた自身の愚行と他人に被害を与えることで失ったんですよ」と教え込むのだ。

 そもそもこの3年間は「新型コロナ禍」ではない。新型コロナ騒動禍、感染対策禍、専門家禍、政治家禍、メディア禍、コロナ脳禍、幼稚な日本国民禍だった。専門家・政治家・メディアから感染対策の重要性を説かれ、生活様式もすべて指導され、従った。それに従わない者は非国民・殺人鬼として、施設・上司・すれ違う人、果てには家族からも厳しい非難を浴びた。

 監獄との関連性でいえば、我々は「過去に誰かにウイルスを感染させた可能性がある」ということが原罪。刑務作業内容は、マスクの実質的な強要とワクチン接種の過度な推奨及びあらゆる活動の自粛だ。「思いやり」「大切な人・大切な誰かのため」の言葉とセットになるのが常で、具体的な刑務バリエーションは豊富。「黙食」「移動自粛」「宴会・花見禁止」「卒業式中止」「無観客試合」などである。

 そして監獄よりも恐ろしいのは、罪の重さを決定する者と、日々の監視者が同一人物ということである。監獄は裁判を経て所定の期間収容されるが、その後、看守が勝手に収容期間を延長したりすることはない。しかし、コロナ騒動では政府分科会をはじめとした専門家と政治家の判断のもと、何度でも緊急事態宣言や移動制限、禁酒令が繰り返された。すべては彼らのさじ加減とフィーリング次第で、「まだ何があるか分からない」「これからも変異するから気は緩めない」「感染対策は文化」と言えば、いつまでも刑期を延ばせたのである。

 となれば彼らが万能感を抱くのは当然だろう。何しろ地獄における閻魔(えんま)の役割と、現場の鬼の役割両方を兼ねているのだから。地獄も今回のコロナ騒動に通じるものがある。鬼は「もう少し耐えたら自由にしてやるからな~ウヒヒ」とばかりに、命令を発する。囚人は「おっしゃる通りにしますだー」と律義に従う。

 当初「今、我慢しておけば早めにここから脱出できる」と囚人は考えていたが、次第にストックホルム症候群になり、反骨心を持った囚人を集団で批判し始める。完全に閻魔・鬼に飼いならされた「小鬼」的存在になり、マスクをしない者をテロリスト呼ばわりし、コロナ禍が終わらない元凶扱いする。ワクチン非接種者は公衆衛生の敵で、ひきょうなフリーライダーだとののしるようになる。かくして囚人同士の抗争が各所で勃発。圧倒的多数派の小鬼たちは、自らの振りかざす正義に酔いしれた。

 小鬼たちは律義にマスクを着け、ワクチンを3回以上打った。模範囚である。旅行代金が安くなり、海外旅行へ行っても陰性証明不要で日本に帰れることになった。閻魔・鬼は巧みにご褒美を与え、地獄の円滑な運営が図られたのである。

 異常な3年間でしたわ、ホント。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年3月23日号掲載

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