京都・横浜市で売却額が2億円超え 「1円入札」横行の“黒歴史”もあった「残骨灰」が儲かる理由

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 残骨灰とは、火葬後に遺族が拾骨したあとに残った焼骨や灰などを指す。そのなかには金歯や棺の釘などの貴金属が含まれ、それを売って驚きの「収入」を上げる自治体が増えているという。一部の業者から「宝の山」と評される残骨灰に秘められた価値とは?

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 京都市が市内唯一の火葬施設である「中央斎場」(山科区)で火葬後に出た「残骨灰」の売却方針を明らかにしたのは昨年9月。背景には1981年稼働の同斎場内にある、残骨灰を保管する収容スペースが満杯に近づいていたという事情があった。

「21年度から残骨灰を細かく砕いて容量を減らす減容化を進めてきましたが、それでも22年度にも満杯になる可能性が浮上した。減容化の過程で残骨灰に含まれる金属類の分別が可能となり、売却に向けた本格的な検討に入りました」(京都市医療衛生企画課)

 今回、売却対象となったのは21年4月から22年9月までの残骨灰計約76トンであり、その売却額は約2億2200万円にのぼったという。

 内訳は「金」約12.8キロ、「銀」約41.5キロ、「パラジウム」約13キロ、「プラチナ」約0.3キロ。なかでも金とパラジウムが売却額の大半を占めるという。

 これらは「主にご遺体の治療用の歯から抽出された」(同)と考えられているが、金やプラチナに関しては人工関節やペースメーカーに含まれていた可能性もあるという。

「遺骨の延長線上にある」と考える自治体も

 京都市は売却の目的について、

「あくまで火葬施設の延命化であって、財政難のために行っているわけではありません。売却で得た収入は斎場の空調設備の更新や火葬炉の改修費用などに充てる方針です」(同)

 と話す。全国に20ある政令指定都市のうち、残骨灰の売却を実施しているのは10を超える一方で、売却しない方針を示している政令市もある。そのうちの一つの大阪府堺市は「遺族の感情を鑑みて(残骨灰は)遺骨の延長線上にあると考えている」(堺市立斎場)と理由を説明した。静岡市も「遺族感情に配慮して行っていない」(同市戸籍管理課)とするも、将来的な売却の可能性については「模索している」(同)と明かした。

 自治体によって対応が違ってくるのは、残骨灰の取り扱いを定めた法令はなく、市区町村の裁量に任されているのが実態だからだ。京都市などが売却の根拠とするのは1939年の大審院(現在の最高裁)による「(残骨灰は)遺骨ではなく、火葬場管理者の所有」とした判例にある。

 仏教界からは売却に慎重な対応を求める意見も出ているが、現時点で市民から京都市に反対や異論の声は届いていないという。

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