タイからドヤ顔で「日本のマスク問題」を語ってみる 馬鹿らしい「卒業式のマスク問題」(中川淳一郎)

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 タイ・バンコクに来ました! 開放的だぁ~! 2022年12月段階で、日本のガチガチコロナ対策が変わらないのであれば、2023年は国外逃亡することを9月に宣言。12月まで東京でテレビの仕事があって、それを飛ばすわけにはいかないので、この期限を設定しました。

 12月に入っても各施設は「他のお客様の安心のため、マスクの着用をお願いします~」のアナウンスと貼り紙だらけで、「お前たち日本人の一番大事なことはカンセンタイサクノテッテイかよ(笑)」状態になり、一旦こんな国から離れるべし!と決めました。

 となれば話は早い。日本で決まっていた用事は1月15日まであったのと確定申告もあるので、2月6日に脱出することを決定。本稿はバンコクに来てから8日目に書いていますが、とにかくコロナを感じることがない。タイ人のマスク着用率は約40%で、外国人は約1%。店でも一切、消毒・マスク着用を強要されない。

「人は人、私は私」の考え方と「私はコロナが怖いからマスクするけど、あなたには強要しない」という大人な感覚があるわけです。タイへ初めて来たのは00年ですが、まさかタイの方が日本よりも大人の国になっているとは……。

 さらに物価ももはや日本とあまり変わりはありません。ちなみにビールはコンビニで490ml缶が200円ほど。マクドナルドはバンコクの方が日本の最低価格よりも高いです。

 かくしてコロナとは無縁のパラレルワールドにいるわけですが、その間、日本の国会やテレビの大事な話題は「卒業式でマスクを外していいか」でした。本来国会って社会保障やら国防、金融政策などを議論するのに、与野党とも一大事と扱ったのは「マスク」ですよ。

「中高生が同級生の顔を見ないまま卒業するのは不憫なので最後ぐらいは外させてあげたい」「いや、外してクラスターが発生したらどうするのだ! 子供の命が大事」みたいな議論がありました。さらには「国歌斉唱の時は着用」「参列する保護者は着用」とか言い出し、テレビのインタビューに答える校長先生は「明確なガイドラインを作ってもらいたい」なんて言う。

 どれだけマスクへの信頼性が高く、そして自分で決められないんだよ! 海外の様子を「〇〇では~」とドヤ顔で言う人のことを「海外出羽守(かいがいでわのかみ)」と呼びますが、私もタイの出羽守になってみます。

 バンコクでは~、マスクの着脱は個々人の判断に委ねられており、したい人はする、したくない人はしない、のが当たり前。そして、重要なのが他人に着脱を要求しないことです。互いの考えを尊重しており、マスクの効果を信じる人は、「私はマスクをしているから守られている」と考える。

 一方日本は「より安全になるからお前もマスクしろ!」とマスク警察が言ってくるわけですよ。いや、お前が2枚着ければいいだけだろ?と思うのですが。それにしても日本って幼稚な国ですね。マスク関連の基準については「バナナはおやつに含まれますか?」みたいな議論をしている。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年3月2日号掲載

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