鈴木誠也がハマった日本選手特有の“落とし穴” 脇腹痛が「WBC辞退」だけで済まない深刻なワケ

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インナーマッスルが追い付いていない

 両選手のサイズを比べても、身長193センチで体重102キロの大谷に対し、鈴木は180センチで、キャンプイン直前には実に106キロを計測したという。

「鈴木は走攻守三拍子そろったプレースタイルが持ち味だった。(広島時代の)19年には25盗塁を記録した。今カブスではさほど盗塁を期待されているわけではないが、パワーが増した中で体の切れが維持できるのかどうか、当初から疑問だった。強くなった外側の筋肉に、インナーマッスルが追い付かずに故障するケースは(他選手で)見てきた。鈴木にも同様の可能性があるとは思っていた」(同前)

 鈴木は昨季、広島からポスティングシステムで移籍し、5年総額8500万ドル(約115億円 ※当時のレート)の巨額契約を結んだ。4月こそナ・リーグの月間最優秀新人に選出されたが、左手薬指の故障もあり、徐々に失速する。終わってみれば111試合で打率2割6分2厘、14本塁打、46打点。入団時、日本人野手最高額だった契約の割には期待外れだった。

「本人も成績に全く納得していなかった。今季の巻き返しに懸ける気持ちは相当強かった。広島時代に2回、首位打者を取った巧打も持ち味だが、長打でないと評価が高まらないことを痛感していた。パワー負けしないようにという意図は理解できる」(MLB担当記者)

 昨季はMLB全体で低反発球への入れ替えが完了し、打球が飛ばなくなった。鈴木が現状の打開策として体を大きくしたことは一定の合理性はあったのだが……。

 MLB2年目の逆襲への準備が、ここまでは裏目に出ている。

「西岡剛」は筋力強化の失敗を告白

 MLBの日本選手を巡っては過去にも、鈴木と同様にウエイトトレーニングの弊害に苦しんだケースが少なくない。11年にロッテからツインズにポスティング移籍した西岡剛氏は身近に接したパワフルな同僚選手らに感化されてウエイトトレーニングに着手したものの、可動域が狭くなるなどし、持ち味を失ったと明かしている。

「松井(秀喜=元ヤンキース)もメジャーの投手の球に力で対抗しようと、筋力強化に取り組んだ。ただ、大きくなった上半身に膝関節が耐えきれなくなり、途中でやめた経緯がある。イチロー(元マリナーズ)は早い段階でウエイトトレーニングの弊害に気付き、過度に筋肥大させない『初動負荷』のトレーニングに専念することで、メジャーで3000本の安打を放った。日本人で体を大きくして成功した例は大谷ぐらいではないか。それもパフォーマンスが最大化できる適正なサイズにしていっただけで、自分のキャパを超えるほど大きくはしていないのではないか」(同記者)

 MLBは米時間3月30日に開幕を迎える。1年目と変わり映えしない成績ならば、契約金額が大きいだけに、鈴木は伝統球団カブスに手厳しい地元メディアの格好の標的になるに違いない。前出の元監督は「まずは適正な体重と筋力に落としていくこと。シーズンではウエイトトレーニングが強化ではなく、維持や調整になる。その中で深層筋をバランス良く鍛えながら脇腹痛の再発防止に努めることではないか」と肥大化したボディを一旦、手放すことが最善と説いている。

デイリー新潮編集部

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