侍ジャパンでまさかの退場劇、史上初の大乱闘…WBCで起きた「珍場面」を振り返る

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両チーム合わせて7人が退場処分

 WBC史上初の乱闘が勃発し、両チーム合わせて計7人が退場処分となったのが、2013年の第3回大会1次ラウンド、カナダ対メキシコである。

 事件が起きたのは、9対3とリードしたカナダの9回の攻撃で、先頭のクリス・ロビンソンが、アーノルド・レオンの初球をバントで三塁に転がし、内野安打で出塁したことがきっかけだった。

 このプレーが「大量リードしている場面ではバントをしない」という“不文律”を破ったとして、メキシコのナインを激高させる。

 打球を処理したルイス・クルーズが、マウンドのレオンに報復を指示すると、レオンは次打者のレーン・トソニに対し、2球続けて内角の体すれすれに投げたため、球審が両チームに警告を発した。

 だが、レオンは3球目も内角を攻め、トソニの背中を直撃したからたまらない。怒ったトソニがマウンドににじり寄ったのを合図に、たちまち両軍ナインによる大乱闘が始まった。

 プロレスのバトルロイヤルもかくやと思われるほどの両軍ナイン入り乱れての大立ち回りに、審判も止めるに止められず、成り行きを見守るばかり。当時巨人に在籍していたスコット・マシソンも、カナダチームの一員として乱闘に参加するなど、スタンドの観客もエキサイトする騒動に発展した末、レオン、トソニら計7人が退場になった。

 実は、カナダがバント安打を狙ったのには、切実な理由があった。初戦でイタリアに4対14と大敗したカナダは、残り2試合に勝って2勝1敗になっても、得失点率の差でラウンドを突破できない可能性があった。

 アーニー・ウイット監督も「普通の試合ならバントはしないが、1点でも多く稼ぐ必要があった」とトラブルを覚悟で点を取りにいったことを認めており、まさに大会ルールが生んだ乱闘劇だった。

 結果的にバント戦法で貴重な1点を加えたカナダは10対3と大勝し、翌日、ラウンド突破をかけて、1勝1敗同士の米国と最後のイスを争ったが、4対9で完敗し、無念の敗退……。あれほどの大騒ぎを演じながら、骨折り損のくたびれ儲けとなった。

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