上海で「町中華」ならぬ「町和食」が流行中 “すき焼きパスタ”を生んだナルホドの食事情

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先駆け的存在の「FINE」

「町和食」人気に火をつけたのは、カフェ「FINE」だろう。

 2017年のオープン当時からパンケーキやトーストなどに混じって、「筑前煮」という文字がメニューに載っていた。上海の日本料理店にはあまりない料理である。しかし味がしっかりしていておいしかった。そのほかにも、「寿喜焼牛肉意麺(すき焼きパスタ)」(68元、1,328円)「葱油塩煎三文魚(鮭のネギ油塩焼き)」(78元、1,524円)など、「日本人には思いつかないけれど絶対おいしい」と思わせるメニューが揃っている。店内のBGMがゆったり系フォークである点も、それらの料理にぴったりといえる。たとえば、高田渡の『自転車にのって』が流れていたりする。

 店内は常に満席で、客層は100%中国人。オープンから6年経った現在は、成都市、杭州市など全国に8店舗を出すまでに成長している。

 オーナーの提子さん(33歳)は生粋の上海人で、日本留学や日本での仕事経験もない。日本語もできない。日本との接点は、「コロナ前は毎年フジロックフェスティバルに行っていた(でも、お目当ては中国にはなかなか来ない欧州のバンド)」というくらいだそう。

「本場の和食って、日本文化に慣れていない中国人には違和感があるんです。スイーツは甘すぎるし、おかずやおつまみは味が薄い。そこをていねいに融合させて、バランスをとって、体にいいやさしい料理を出す店はこれまでなかった」(提子さん)

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