国際指名手配中のタイ元首相が日本へ入国し、警視庁は大慌て…なぜ事前に把握できなかったのか

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、国際指名手配中に日本にやってきたタイの元首相について聞いた。

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 2018年3月29日、タイで有罪判決を受けICPO(国際刑事警察機構)から国際指名手配されているタイのインラック元首相と、兄のタクシン元首相がプライベートジェットで羽田空港に入国した。都内のホテルで行われた石井一元自治相の出版記念パーティーに参加するためだった。

「実を言うと、この時、警視庁は2人が日本に入国したことを全く把握していませんでした」

 と明かすのは、勝丸氏。

「2人が突如、都内のホテルに現れたことがマスコミに報じられ、初めて知ったのです。警視庁の内部では『不法入国じゃないか、いや、密入国かもしれない』と大騒ぎになりました。警視庁とすれば、彼らが堂々と日本に滞在しているなんて、あってはならないことですからね、問題になったのも当然です。当時私は有給休暇を取っていましたが、警視庁から緊急の呼び出しを受けたほどです」

石井氏と旧知の仲

 タクシンと石井氏は、旧知の仲だった。

「石井氏は、タイの議員連盟の幹部だった関係で、タクシンとは親しかったのです。タクシンは2011年8月にも来日しており、その際も石井氏がホテルを手配するなど、色々便宜を図っていました」

 タクシンは2006年9月の軍事クーデターで失脚。2008年8月、今度は英国へ逃亡。同年10月、汚職で禁錮2年の実刑判決が下った。

 一方、インラックは2017年8月、コメを農家から市場価格より高く買い取る政策を実施し、国に多額の損害を与えたとして職務怠慢容疑で逮捕されそうになったため国外に逃亡。同年9月、最高裁は禁錮5年の実刑判決を下した。翌10月、タイ警察はICPOに彼女の国際指名手配を要請した。身柄を拘束する赤手配ではなく、発見したらタイの警察当局へ情報を提供する青手配された。

 当時2人はカンボジア、イギリス、ドバイ、中国など、各国を転々としていたという。

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