“門外不出”の高級カンキツ「愛媛38号」は、なぜ「中国産」としてカナダで勝手に売られているのか

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「攻めの農業」掲げ“過去最高額”を誇る国

 これほどカナダ向けの輸出が縮小した理由は、大きく二つある。

 一つは、国内の産地に輸出に回す余力がなくなり、量を減らすとともに品質も下げてしまったことだ。輸送中のカビの発生もあって、現地での評判を落としてしまった。

 もう一つは、中国や韓国といった外国産との競争が激しくなったことだ。なかでも中国産は、国内の需要が飽和状態になりつつあり、ここ数年は毎年100万トン前後を海外に輸出している。その一つがカナダだ。

 カンキツの輸出額を日中で比較すると、日本が2021年に約56万米ドルだったのに対し、中国は約2198万米ドルと40倍近く多い(カナダ政府の公式ホームページより)。中国が例年2000万米ドル前後を輸出しているのに対し、日本は下落基調で、ようやく2021年になって前年比で倍近く増やした。

 皮肉なのはこの間、第二次安倍政権が農業の競争力を高める「攻めの農林水産業」の実現を訴え、輸出拡大政策を打ち出していたことである。これを受けて農水省は、農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にすると掲げてきた。カンキツについては、香港や台湾、シンガポールといった国や地域への輸出を強化している。その効果でここ数年、輸出額が若干持ち直した。

 農水省は「2021年の輸出実績は前年比数量で49%増、金額で60%増と過去最高額の11億円となった」と誇る(「青果物の輸出をめぐる情勢について」より)。これは、担当課が2000年以降の輸出額を見たうえで作成した資料だという。

 だが実際には、1973年に温州ミカンを2.4万トン輸出していたとき、その額は27億円と倍以上に達していた。しかも、当時は温州ミカンの缶詰を大量に輸出していて、ピークの1970年には8万1600トン、132億円にものぼっていた(北川博敏「国際化時代における果実、野菜」『日本食品工業学会誌』37巻8号、1990年)。現状はそんな過去に比べるべくもない。

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