高校野球「強豪校」の寡占化がさらに…“格差是正”には、「甲子園大会」の見直しも必要か

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「球数制限」の影響も

 組織化が進んでいるのは、スカウティングだけではない。かつては監督が1人で担っていた選手の指導についても、より専門的な知識を持つコーチやトレーナー、外部のスタッフが行うチームが増えている。もともと能力の高い選手をより高度なトレーニングで鍛える……こんなチームに、いわゆる“普通の高校”が勝つのは、簡単ではなくなっている。

 これに加えて、「強豪校」と「そうでない高校」の差をさらに広げたのが、一昨年から導入された「球数制限」である。1人の投手が投げられるのは、1週間で500球までという比較的緩い制限ではあるものの、前出のスカウトは、「球数制限の影響は、決して小さくない」と話す。

「実際に球数の制限いっぱいで、ストップがかかるケースは稀ですが、甲子園で優勝しようと思ったら、複数の投手ではないと無理です。甲子園はおろか、地方大会でも、組み合わせや日程によっては勝ち抜くことが厳しいですよね。今は、エースが登板過多になると、世間の批判が集中しやすいですし……。そうなると、どうしても、選手層の厚いチームが有利になります。一方、打者も力がついており、金属バットとなると、プロに行くような投手でも抑えることは簡単ではありません。最低でも2人、できれば3人か4人は、力のある投手がいるチームでないと、甲子園で上位は狙えない時代だと思います」(前出の関東地区担当スカウト)

甲子園を目指せるチームは全体の1割から2割程度

 前述したように18年には吉田輝星が大車輪の活躍を見せたが、そのような“スーパーエース”で勝ち進む時代は、完全に終わりを迎えたといえる。これに加えて、24年からは金属バットの規格が“低反発”なものに変わる。規格が変更されると、飛距離が出にくくなり、打撃技術の差が打撃の結果に出やすくことから、「強豪校」と「そうでない高校」の格差は、より広がることになりそうだ。

“格差”といえば、昨年夏の千葉大会の2回戦では、県内強豪校の千葉学芸が、82対0(5回コールド)で、広域通信制高校「わせがく」に圧勝する試合があった。ラグビーのような「82点」という歴史的な点差を巡って、大会の在り方にあらゆる意見が噴出したことが記録に新しい、今後、このような「力の差があり過ぎる試合」が増える可能性も高く、こうした試合は、選手の安全や健康面を考えても、良くないことは明らかだ。

 ある高校野球の指導者は、「力の差があり過ぎる試合」を防ぐような方法も考えるべきではないかと話した。

「伝統を考えると、『甲子園大会をなくす』というのは現実的ではなく、あれほど影響力が大きい大会があることで、競技力の向上になっている部分も確かにあると思います。一方で、『トップレベルの高校』と、いわゆる『普通の高校』の差はどんどん開いており、同じ“高校野球”という土俵で戦うのは、無理があるケースが増えています。現実的に、甲子園を目指せるチームは全体の1割から2割程度で、残りの8割のチームは“甲子園を目指す行為”が目的ではないでしょうか。そうであれば、社会人野球の『企業チーム』と『クラブチーム』のように、レベルによって頂点を決める戦いの“スタート”を変えるというのも、一つの方法だと思います。今までと同じやり方にこだわっていると、トップレベルのチームも、そうでないチームも不幸なのではないでしょうか」

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