ロシア軍の“嘘の戦果報告”が次々発覚…世界から失笑されても“大本営発表”を続ける苦しい事情

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 ロシア軍はウクライナ戦争で数々の“あり得ない大戦果”を発表し、世界中の軍事専門家やメディアの失笑を買っている。例えば、YAHOO!ニュースのマイケル・ワイス記者は1月13日、皮肉たっぷりのツイートを投稿した。日本語に訳すと以下のような感じだろう。

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《ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、『ロシア軍はウクライナ国内で、すでに4両のブラッドレー歩兵戦闘車を破壊した』と発表した。これは実に並外れた戦果だろう。なぜなら、まだ戦闘車はウクライナに到着していないからだ》

 1月9日には「BBC NEWS JAPAN」が、「ロシアがウクライナ兵600人を殺害と発表、ウクライナは『プロパガンダ』だと否定」との記事を配信した。担当記者が言う。

「ウクライナ軍は1月1日、ロシア軍の宿舎をHIMARSのロケットで攻撃しました。年越しのパーティーに興じていた徴集兵など約400人が戦死したと発表し、親ロシア派の軍事ブロガーもその信憑性を認めました。この報復としてロシア軍は8日、ウクライナ軍の宿舎をロケット攻撃し、600人を殺害したと発表しました。ところが、現地で取材をする複数の記者が、すぐに信憑性を疑う記事を配信したのです」

 BBCも現地の様子を撮影した写真を配信した。大きな爆発が起きたことは確認できるが、《建物2棟がひどい爆撃を受けたことや、ロシアが主張するような規模の大量死があったという視覚的証拠はない》と伝えた。

ロシア軍の焦り

「ロシア軍の8日の発表は、実際にロケット攻撃で爆発が起きたことは事実です。一方、コナシェンコフ報道官の12日の発表は、そもそも戦闘車が存在しなかったわけです。ネットの発達でファクトチェックは迅速になりました。『なぜロシア軍は、すぐにウソだとバレる発表をするのだろう?』と誰もが首をひねっています」(同・記者)

 軍事情報の総合ニュースサイト「ミリレポ」は1月14日、「ロシア国防省がウクライナにはまだ無いブラッドレー歩兵戦闘車の破壊を発表!過去にもあった虚偽の戦果報告」の記事を配信した。

 この記事ではロシア軍の虚偽発表として、他にも「44両のHIMARSを破壊したという嘘」と「ウクライナ空軍の兵力より多い撃墜数」の2点を指摘している。

 軍事ジャーナリストは「戦史を紐解けば『敗色が濃厚な国は嘘の発表をすることが多い』という事実が浮かび上がります」と言う。

「旧日本軍の大本営発表はもとより、ベトナム戦争ではアメリカも事実と異なる発表を繰り返しました。ウクライナ戦争でロシア軍は多大な被害を出し、その焦りから嘘の戦果を発表しているのでしょう。ウクライナやNATO(北大西洋条約機構)諸国は冷静に事実と照らし合わせ、ロシア軍がどれくらい追い詰められているのか分析を重ねていると考えられます」

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