大河オタク・松村邦洋が熱弁する「歴代ベスト5」 家康主人公作品が二つランクイン

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「勝った方が負けた方を裁くんだよ」

〈「草燃える」の放映は1979年。源頼朝と北条政子の夫婦を軸に、鎌倉幕府の成立と発展を描いたドラマだ。石坂浩二、岩下志麻らが出演した。〉

 頼朝が死んでから始まる、御家人同士の血みどろのサバイバルが見どころです。平家を倒すまではみんな一丸となっている。でもその敵がいなくなるとそれまで力を合わせて奮闘してきた仲間同士が毎週トーナメント戦のように闘い、死んでいく。そのドロドロ、魑魅魍魎の世界に生きる、人間の業の深さに圧倒されました。

 松平健さん演じる御家人の北条義時は、若い頃は大人しくて純粋。その親友に、滝田栄さん扮する伊東祐之(すけゆき)という人物が出てきますが、荒々しい坂東武者です。でもストーリーが進むに連れ、二人の人格が入れ替わったようになるんです。義時は仲間を蹴落とすために手を血で染め、鎌倉幕府の最高権力者・執権に上り詰める。一方、祐之は仲間に利用され、落ちぶれて盗賊の仲間になり、義時に捕まって見せしめのために両目を潰されてしまいます。

 当時、僕は小6だったんですね。一緒に見ながらおじいさんに「どっちが良い人? どっちが悪い人?」と聞いたんです。そうしたら「良いも悪いもないんだよ。勝った方が負けた方を裁くんだよ」と。小学生ながらビビッときましたね。人間の世ってこういうことなのかな、と。

異様なハマり方

 最終回では、承久の乱が終わった後、琵琶法師になった祐之がめぐりめぐって義時の屋敷の庭で「祇園精舎の鐘の声~」と「平家物語」を弾き語り始める。義時に「伊東祐之ではないか?」と聞かれても「名もなき琵琶法師です」。遠くからそれを聞いた北条政子が「鎌倉は守ったのに、私の大切な人はみんな逝ってしまった」と涙を流す。このシーンは未だに忘れられませんよ。実は伊東祐之は架空の人物。彼の存在がこのドラマに陰影を生み出していますよね。

 当時は、ちょっと異様なくらいのハマり方をしていました。日曜日の夕方になるとそわそわしはじめ、早めにお風呂に入って番組に備える。テーマ曲が流れだすと身体に震えが起きるんです。平日になると、図書館で頼朝や義経とか、鎌倉時代の本をむさぼるように読む。学校では自分だけのノートを作り、「壇ノ浦の戦い。〇〇。〇歳」と、出来事と登場人物の年齢を毎日のように書いていました。

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