ドラフト4位入団の“小柄”な右腕「山本由伸」は、なぜ「日本のエース」になれたのか オリックスのスカウトが見抜いた“日の丸を背負える才能”

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「デカい人にも負ける気はしないですね」

 周囲と違う特徴は、山本にとって武器になっている。高卒3年目の2019年、最優秀防御率を手中に収めたシーズン最終登板の少し前、本拠地の京セラドーム大阪でじっくり話を聞く機会があった。

 投球術や思考法について柔和な表情で語った約45分間のインタビューで、語気を強めた瞬間がある。「身体が大きくなくても、速い球は投げられますか?」と尋ねた直後だ。

「投げられます。もし自分が今、『僕は体が小さいから、速い球を投げられないですよ』とか言っていたら、しょうもないというか、あきらめちゃっているというか。もちろんデカいほうが、同じ動きをできるのなら物理的に速い球を投げられると思います」

「でも、この大きさだからいいこともたくさんあるので。そう考えると、身体が大きいのも小さいのも一緒じゃないかなと思います。別に自分も小さすぎるわけでもないので、めっちゃデカい人にも負ける気はしないですね」

 野球は体格で争う競技ではない。小さくても、活躍している選手は少なからずいる。

 だが山本も認めるように、大きい選手が有利なのは間違いない。投手なら速い球や強い球を投げられ、打者なら速い打球を放ち飛距離を伸ばしやすいからだ。

 ゆえに、各球団のスカウトは高身長の選手に目をつける。その傾向は昨季、26年ぶりの日本一に輝いたオリックスにも窺えるだろう。

 エースの山本が日本シリーズ初戦で左脇腹を痛めて離脱したなか、勝利を手繰り寄せたのは強力ブルペン陣だった。力強いストレートと落差のあるフォークで相手打者を圧倒した山﨑颯一郎は190cm、宇田川優希は184cm。大ベテランの平野佳寿は186cm、アメリカ人のジェイコブ・ワゲスパックは198cmだ。

 昨今のプロ野球では洋の東西を問わず、投手の球速アップが目覚ましい。メジャーリーグでは160km/hを投げるピッチャーが珍しくなく、日本でも150km/hを当たり前のように目にする。

 その背景には、ウエイトトレーニングの進化と科学的アプローチがあると考えられる。野球の競技特性を踏まえると、パワーとスピードに優れれば勝利に近づきやすく、高身長の選手を獲得するのは「当然」と言えるのだ。

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