「ブラッシュアップライフ」「女神の教室」にヒットの予感 バカリズムの巧みな脚本のポイントは

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働くことのカッコ良さを描く月9

 日曜ドラマはずっとコア層(13~49歳)をメインターゲットにしているように見えた。だからハチャメチャなギャグ漫画を原作とした「新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将〜」(昨年夏ドラマ)や、若い読者に人気のミステリー小説が原作の「霊媒探偵・城塚翡翠」(同秋ドラマ)を制作してきたのだろう。

 それによりコア視聴率は高水準を記録するようになった。
8日に放送された「ブラッシュアップ――」の第1話もコア視聴率は高水準。特にT層(個人視聴率のうち男女13~19歳)は3.1%を記録した。やはり同日から始まった「日曜劇場 Get Ready!」の数字を超えた。大人でも楽しめる内容だから、ほかの層も伸びるだろう。

 コア層を狙ったことで得た副産物もある。日曜ドラマは民放プライム帯(19~23時)で最も破天荒な作品を流す放送枠に映る。織田信長ら戦国武将のクローンが登場した「新・信長公記」が好例。これにより、放送枠の存在感も高まったので、大きなプラスに違いない。

 月9も放送枠の存在感がより高まっている。恋愛ドラマ路線はとっくに終わっているが、公正取引委員会の奮闘を描いた「競争の番人」(昨年夏ドラマ)、「PICU 小児集中治療室」(同秋ドラマ)、そして現在の「女神の教室〜リーガル青春白書〜」と続いたことにより、月9独自のお仕事ドラマの性格が浮き彫りになってきた。

 それはマジメに働くことのカッコ良さ。「競争の番人」の小勝負勉(坂口健太郎[31])はエリートで驚異的記憶力も持っていたが、それでも捨て身で巨悪と戦った。「PICU」の志子田医師(吉沢亮[28])も子供たちの命を救おうと無我夢中だった。

 2人とも失敗したし、悩むこともあった。スーパーマンではなかったものの、かえって人間臭く、観る側を惹き付けた。若いことも特徴である。中年だったり、仕事も遊びもスマートにこなしたりした旧来のお仕事ドラマの主人公とは異なる。

「女神の教室」の主人公・柊木雫(北川景子[36])にも2人と重なり合う部分がある。東京地裁の裁判官ながら、青南大学法科大学院に出向させられ、教員として奮闘中。司法試験合格しか頭にない学生に対し、法の精神を熱く訴えている。

 この法科大学院には司法試験のことしか考えない教員・藍井仁(山田裕貴[32])がいる。どちらが学生に良い未来を与えられるのか。

 30分拡大だった9日の視聴率は世帯10.5%、個人6.4%。21時台は世帯も個人も横並び2位だったが、拡大分の22時台はどちらもトップだった。

 司法制度改革に伴い2004年に全国で開校した法科大学院が連ドラの舞台になるのは初めて。旧来のリーガルドラマにはなかった新しさがあり、北川も役柄にハマっているので、こちらも支持を伸ばしそうだ。

 月9の春ドラマは木村拓哉(50)主演の「風間公親-教場0-」になることが発表済み。風間が教官として警察学校に赴任する前、新人刑事の教育に当たっていたころが描かれる。登場人物たちはやはり職業と真摯に向き合うのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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