テスラ株急落、GAFAの大量リストラ…米テック業界に未来はあるか

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 世界で最も著名な企業家の1人であるイーロン・マスク氏が率いる電気自動車(EV)企業テスラの株式が昨年10月以降、わずか3ヶ月間で50%以上下落している。

 昨年の世界販売台数が目標に達しなかったことで高成長に対する期待が揺らいだことに加え、世界最大のEV市場である中国で値下げを繰り返しており、競争激化に伴う収益力の悪化が懸念されている。ツイッターの買収資金確保のため、マスク氏がテスラ株を大量に売却したことも災いした。

 地政学リスクの高まりに直面している投資家が、キャッシュフローが堅調な企業を買い、高成長株を売る構図が鮮明になっている。テスラの株式時価総額は昨年末、「エネルギー価格の高騰」という追い風を受けて株価が急上昇していた米国最大の石油企業エクソンモービルに追い抜かれてしまった。

 テスラの魅力は技術力の高さにもあった。

 テスラは世界が注目する自動運転車の開発競争でも常に先頭を走ってきたが、ここに来て逆風が吹き始めている。

 米カリフォルニア州が今年初めに新たな法律を施行したことで、テスラは自社の自動車を「自動運転車」として販売することができなくなってしまった。同法によれば、テスラが販売している自動車は「部分的な自動運転」機能を有しているに過ぎないからだ。

 米国運輸省道路交通安全局は、テスラの部分的な自動運転機能が引き起こした数十件の事故(死亡者も出ている)を検証しており、テスラに対する社会の監視の目が厳しくなっていることが関係している。

 逆境に陥っているのはテスラに限らない。

アップルも…

 テスラのライバル、アップルも昨年12月「開発中の『アップルカー』を完全な自動運転車とする構想を断念した」ことを明らかにした。

 自動運転車が実用化するためには、車だけではなく、全体のシステムを整備することが不可欠だ。開発コストが当初の予想をはるかに超えることが判明しており、自動運転車への期待は急速にしぼんでいるのが実情だ。

 テスラはテック企業の一角を占め、米国経済を牽引してきた。

 テック企業とは、テクノロジー、特にIT技術を活用してビジネスを展開している企業のことを指す。GAFAと呼ばれる巨大IT企業(グーグル、アマゾン、フェースブック(現在はメタ)、アップル)はその代表格だ。

 飛ぶ鳥を落とす勢いだった米テック業界だったが、このところ人員削減(レイオフ)の波が広がっている。

 アマゾンは1月4日「事業計画の見直しに伴うレイオフの規模は全従業員数の1%強にあたる1万8000人超になる」と発表した。

 利上げによる景気減速懸念から、米テック業界の昨年のレイオフは15万人を超える高水準となっている(1月6日付日本経済新聞)。

 米テック業界は2008年の金融危機以降、ほぼ一貫して事業を拡大させてきた。

 特に2020年からの新型コロナのパンデミックによる「巣ごもり消費」などで需要が急増した。「パンデミック後もオンライン化が一段と進む」と見込まれていたが、特需は一過性に終わり、その反動が鮮明になっている形だ。

 アップルの株式時価総額も1月3日、2兆ドルの大台を割り込み、直近1年間で約1兆ドルも減少してしまった。

 米テック業界の不振から、昨年12月の米製造業景況感指数は11月に続き好不況の節目である50を下回り、2年7ヶ月ぶりの低水準となっている。

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