「20年間で一番食卓の雰囲気が良かった」 日本代表専属シェフが明かすW杯大躍進の舞台裏

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 2022年の冬を熱くしたサッカーのW杯。強豪を破り、ベスト8にあと一歩まで迫った「森安ジャパン」には称賛の声が上がったが、陰のヒーローの一人はこの人だろう。戦士たちを食で支えた専属シェフ・西芳照氏(60)である。

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「全てが終わった後、長友(佑都)さんに“食事はどうでしたか”と聞いたら、“ブラボー”をいただきました。それだけでもう十分です」

 と西シェフは語る。シェフは福島県の出身。04年に日本代表の専属となり、海外遠征に同行、選手やスタッフに食事を提供してきた名物料理人である。

 W杯も06年大会以降、5回連続での伴走となった。ただし今回の舞台はカタール。初の中東開催、しかも厳格なイスラム教国とあって勝手が違ったはず……。

「カタールは何度も試合で訪れています。どんな国でどんな環境かということは頭に入っていました」

 として続ける。

「しかし、今回は自分にとって最後のW杯と決めていた。だから絶対に悔いが残らないよう、準備は徹底して行おうと思いました」

日本製の醤油は使えず

 具体的には、先の9月に代表のドイツ遠征に同行した際、帰りにカタールに寄って拠点ホテルの下見や食材の現地調達ルートのチェックを行う。帰国後も在日カタール大使館に赴いて現地の情報を収集した。入念な準備のためかトラブルはほとんどなかったという。

「カタールには日本食を扱う業者も多く、食材の9割は現地で調達できました。宗教上の理由で豚肉はNGですが、これも牛肉、鶏肉、レバーで補った。アルコールもダメなので、料理酒やみりんはNG。日本の醤油も酒精が入っているので使えません。そこで、料理酒風、みりん風の調味料やアメリカのハラール認証されている醤油を用いました」

 苦労したのは寒暖差。カタールの12月は、昼は30度を超えることもあるが、夜になると、

「半袖だと肌寒さを感じるほど冷え込みます。また、ガンガン冷房を効かせるので、ホテルでは寒く感じることも。そこで麺類は、温かいものと冷たいものの両方を出すようにしました」

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