新型コロナ「第8波」到来 塩野義・飲み薬「ゾコーバ」を中国にどんどん売った方がいい理由

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 年末年始を迎える日本は新型コロナ「第8波」に見舞われている。

 東京都は12月22日、新型コロナの感染拡大に伴い、医療提供体制の警戒度を最も深刻なレベルに引き上げた。全国の 新型コロナの死者数は1日当たり300人を超える 状況がしばらく続いたこともあり、患者の搬送先が決まらない事案が日本中で急増している。

 政府はオミクロン型に対応した新ワクチンの接種を推奨しているが、接種率は12月24日までの約3ヶ月間で全人口の32.5%にとどまっている。

 これまで対策の主役だったワクチンの効果が疑問視され始めている。米コロンビア大学などの研究によれば、今後流行が予想されるオミクロン派生型は免疫をすり抜ける性質を持つため、ワクチンによる感染予防は難しく、深刻な脅威になる。

 厚生労働省が12月21日に公表したデータによれば、新型コロナの重症率・致死率はいずれもインフルエンザ並みに低下した。だが、新型コロナの感染力はインフルエンザと比べて格段に高いままだ。このため、今後は「感染防止」から「感染しても確実に治癒すること」へと対策の軸足をシフトすることが賢明だ。

 その際、決め手となるのは口から手軽に摂取できる抗ウイルス薬(飲み薬)だ。

クラスター防止にも期待

 日本で最も処方されている飲み薬は米ファイザー製の「パキロビッド」だ。米疾病予防管理センター(CDC)によれば、パキロビッドはオミクロン派生型にも有効だという。

 抗ウイルス薬は新型コロナの後遺症リスクも低減できるようだ。

 米セントルイス・ワシントン大学の研究によれば、感染を確認してから5日以内にパキロビッドを服用すると、後遺症の症状を訴えるケースが約2割減った。

 日本では11月下旬、待望の国産飲み薬(塩野義のゾコーバ)が緊急承認された。

 パキロビッドが重症化リスクの高い人に限定して処方されているのに対し、ゾコーバの投与対象は12歳以上の重症化リスクのない軽症から中等症向けと幅広い(妊婦などへの投与は禁じられている)。

 塩野義によれば、11月24日から12月4日までにゾコーバが服用された患者から重篤な副作用は出ていないと報告されている。

 東京大学の河岡義裕特任教授によれば、ゾコーバもパキロビッドと同様、オミクロン派生型に対して高い有効性を示しているという。

 ゾコーバの服用により新型コロナ特有の5つの症状がなくなるまでの時間が約24時間短くなることが臨床試験で示されている。有効性を疑問視する声があるが、インフルエンザの飲み薬であるタミフルの効果が有症状期間を約17時間短縮させるに過ぎないことにかんがみれば、その有効性は十分だと思う。

 ゾコーバで注目すべきは体内のウイルス量が激減することだ。投与開始から4日目でウイルス量は30分の1に減少することから、感染力の高い新型コロナのクラスター発生防止に寄与するのではないだろうか。

 政府は塩野義との間で100万人分の供給契約を締結していたが、加藤厚生労働大臣は12月13日「追加で100万人分の供給契約を結んだ」ことを明らかにした。

 当初、ゾコーバを取り扱えるのはパキロビッドの処方経験がある全国約4900の医療機関などに限られていたが、今後、実績がなくても都道府県が選定する機関が追加されることになっており、必要な患者に確実に処方できる体制が整いつつある。

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