“トレード会議”は「やる意味がない」とわずか3回で中止…現役ドラフトは同じ轍を踏むのか?

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新聞には「実のない“整理市”」の見出し

 翌71年の第2回は前年を上回る17人が指名されたが、どの球団も1、2巡目を見送り、3巡目で初めて指名が行われるという相変わらずの低調ぶりだった。

 最も成果を挙げたと言えるのが、1チームでは最多の4人を指名した南海。同年ヤクルトで103試合出場した準レギュラーの外野手・大塚徹は、「足があり、ファイターだとも聞いている」と野村監督が見込んだとおり、サヨナラ押し出し四球の日本記録や野次将軍としてベンチのムードを明るくするなど、「ベンチにいるだけで、かけがえのない戦力」になった。

 そして、最後の開催となった72年の第3回では、指名は過去最少の8人にとどまり、新聞にも「実のない“整理市”」と揶揄する見出しが躍った。

移籍活性化という目的に添うのか

 2軍の若手にまじって、鎌田実(阪神)、菱川章(中日)のベテランやミラー、バート(いずれも中日)、ポインター(太平洋)ら戦力外になった助っ人6人も候補に挙がったが、いずれも高年俸が災いして、指名を回避された。引退寸前のベテランや助っ人で人数の帳尻を合わせることによって、若手をプロテクトしたとも解釈できる状況も、会議の迷走ぶりを示している。

 そんななかで、近鉄が指名した巨人の外野手・阿部成宏は、西本幸雄監督時代の75年に初めて規定打席に到達するなど、出番の少ない若手が移籍先で花開いた唯一の成功例となった。

 だが、“2軍から2軍へのトレード”は、関係者から「やる意味がない」の声が相次ぎ、議長の鈴木龍二セ・リーグ会長も「供出する人数を含め、方法について考慮する必要がある」と改善を求めたが、第4回が開催されることはなかった。

 今回の「現役ドラフト」も、育成選手が対象外になるなど、出場機会に恵まれない選手の移籍活性化という目的に沿うものかどうか、改善点があることは否めない。

 50年前と同じ轍を踏むのか、それとも、くすぶっている選手に光が当たる状況を促進できるのか、「現役ドラフト」の成り行きと今後に注目したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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