「酒」「豚肉」がNGのカタールW杯、専属シェフの“秘策”とは 鉄板のルーティン飯、豚肉の代用食は?

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 いよいよ開幕したカタールW杯。初戦・ドイツ戦で日本はまさかの大金星を飾った。一方、史上初めて中東での開催となった今大会は、飲酒や豚肉食がNGなど、これまでとは異なる食事面のコンディション管理が求められている。専属シェフが直面する闘いとは――。

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 カタールは厳格なイスラム教国。公共の場所での飲酒はNGで、アルコール類の販売も持ち込みも禁止。旅行客が楽しむには、許可を受けた一部ホテルのレストランを利用するしかない。

 しかし、それでは120万人も押し寄せる観戦客の不満が爆発すると見て、今回、カタール政府は開催期間中、スタジアム周辺とドーハに設けるファンゾーンでの販売を許可していた。

 ところが、だ。

 スポーツ紙サッカー担当デスクが言う。

「開会式2日前になって一転、スタジアム周辺での販売を禁止した。公式スポンサーのバドワイザーは激怒しています。ファンゾーンで飲むにも500ミリリットル缶が日本円で2千円ほどもする。冬でも最高気温が30度近くなることがある国ですから、酒飲みには耐え難いですね」

鉄板のローテーションメニュー

 その地で料理の腕を振るうのが日本代表の専属シェフ・西芳照氏(60)だ。2006年のドイツ以来、5大会連続となる大ベテランである。

「西さんには夜のディナーのメインディッシュとして、鉄板のローテーションメニューがあるんです」

 とは西氏に複数回の取材経験を持つ、スポーツライターの二宮寿朗氏。

「試合の3日前には牛ヒレハンバーグ、2日前には銀ダラ西京焼き、前夜にはウナギのかば焼き。試合に近づくに連れて脂質を減らしていくそうです。試合後の夕食はチキンカレーで、その後は同じローテーションを繰り返していく」

 代表滞在ホテルの厨房を貸し切り、選手の前で調理して作り立てを出す「ライブクッキング」が大好評。

 ご本人がテレビのインタビューに答えたところによれば、三笘薫(25)や吉田麻也(34)ら「グルテンフリー」を実践する選手の料理にはパン粉ではなく米粉を使用。長友佑都(36)の青魚、堂安律(24)のビーツなどルーティンで食べるメニューのある選手にはそれも準備するなど、細やかな対応を怠らないとか。長年信頼を得ている秘訣(ひけつ)であろう。

豚肉はどうやってカバーする?

 今回のカタールは、料理酒やみりんが使えないだけでなく、イスラム国家ゆえに豚肉もNGだ。名シェフはどう対応するのか。

「豚肉はビタミンB1の補給源として重要ですが、レバーなど他の食材でもカバーできると言っていました。南アやブラジル大会では現地調達が難しく、チャーター機で食材を持ち込んでいたようですが、カタールは意外とものが豊富で、新潟県産のお米やウナギも現地で手に入るそうです」

 代表にとっては守り神のような存在だが、

「今年で還暦ということもあり、この大会で集大成にすると言っていました。実はご本人は前回のロシア大会で最後のつもりだったそうですが、決勝トーナメントの1回戦・ベルギー戦で2―0から逆転されるという悔しい敗戦を体験して、もう一回やってみようという気になったとか。ラストの大会ですから、いつも以上の思いを込めて腕を振るっていますよね」

 激闘が繰り広げられているのはピッチの中だけではない。

週刊新潮 2022年12月1日号掲載

特集「『W杯』灼熱のドイツ戦 『森保ジャパン』ピッチ外の激闘」より

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