NHK「紅白歌合戦」に上がる怨嗟の声…そういえば「ガッテン!」打ち切りの時も

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若者が逃げたらNHKは維持できない

 昨年までの紅白も若者に強くなかった。本来、若者は音楽が好きなのに。このままでは若者の紅白離れ、ひいてはNHK離れが進む。すると、将来的にNHKという組織が維持できなくなる恐れが出てくる。非現実的な話ではない 。テレビを持たない若者は増えている。

 内閣府の3月の調べによると、テレビ受信機の普及率は93%。しかし、29歳以下の男性単身世帯に限ると、所有率は78.4%にガクンと落ちる。現行法ではテレビを持っていない人から受信料は取れない。おまけに人口減少が進んでいる。NHKにとっては死活問題だ。

 NHKは4月から若者向けの音楽生番組「Venue101」(土曜午後11時)を始めた。11月12日の視聴率は世帯2.0%、個人1.0%。13歳から49歳の個人視聴率は0.4%。まだ軌道に乗っていないが、斬新な内容であり、若者に見せたいという意欲は伝わってくる。

 この番組に限らず、NHKは苦手とする若者を振り向かせることに懸命なのだ。4月改編で平日午後10時45分から同11時半まで「プライム帯・若年層ターゲットゾーン」としたのもその一環だ。

 この若年層ターゲットゾーンには若者ウケしそうな帯ドラマや情報番組などが並んでいる。前田晃伸会長(77)の肝煎りによる改革である。

 紅白の若者対策も昨年までの番組に満足していなかった前田会長の意向を受けたものにほかならない。みずほフィナンシャルグループ元社長・会長である前田会長は組織の持続化を考え、若者対策を練らせたのだろう。

 紅白は中高年以上を斬り捨てるつもりはない。だから、石川さゆり(64)、天童よしみ(68)たちも選ばれた。今年の売れ行きだけ考えたら、演歌勢は当選が危うい人が多い。

海外勢の台頭で生じる問題

 それどころか、売上高で選考したら、中高年以上が知らないアーティスト一色になる。音楽の売り上げに最も貢献しているのは昔も今も若者なのだ。

 紅白は出場歌手も司会もバランスを取ろうとしている。だから司会は大泉洋(49)、橋本環奈(23)、櫻井翔(40)、桑子真帆アナウンサー(35)を起用した。見事なまでに年代がバラバラだ。

 ただし、紅白が考えたバランスに異を唱える人はいるだろうが……。

 韓国系のアーティストが多いことにも視聴者側から不満の声が上がっている。紅白スタッフも本音としては、日ごろ世話になっている国内アーティストの枠を減らしたくないはずなのだ。

 過去にも同じようなケースがあった。紅白に否定的だった報道局出身の故・島桂次氏が会長(1989~1991年)だった当時である。

 1990年の紅白は58組中、7組が海外勢だった。米国のシンディ・ローパー(69)や韓国のチョー・ヨンピル(72)らである。旧ソ連のアーティストまで出場した。島氏の意向だ。この時も物議を醸した。

 国内アーティストからは怨嗟の声が上がった。普段、「NHKのど自慢」への出演などで協力しているからである。今回も憤る国内アーティストがいるのではないか。

 紅白の昨年の視聴率(2部)は世帯が34.3%で個人が24.8%。世帯は過去最低だった。世帯視聴率は過去最低を更新する可能性がある。数の多い高齢者が敬遠するからだ。

 もっとも、もう世帯視聴率という言葉は局内文書にないのだから、いくら低くたってNHKは気にしない。問題は目論見通りに若者が観てくれるかどうかである。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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