「全行員は借金を申告せよ」 滋賀銀行の通達の狙いは? 過去に昭和史に残る横領事件が

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 滋賀県の地銀・滋賀銀行のホームページには〈役職員一人ひとりの人権や個性を尊重〉するとある。ところが、同行が職員全員に借金状況の自己申告を求めていると朝日新聞が報じたのは10月20日のことだ。

 それによると、同行は9月26日、行内向けのウェブサイトに「金銭状況等調査を実施する」との文章を載せた。項目は3点あって、一つは借金と返済の状況。ローンやクレジットカードのキャッシングでいくら借り、返済しているのか報告せよというものだ。2点目は職員間のお金の貸し借りで、三つ目が投機的な投資取引について。ちなみに2点目と3点目はもともと就業規則などで禁止されている。

 なぜ、こんな調査に踏み切ったのかというと、この4日前に明らかになった事件がきっかけだった。同行の元行員が遊興で金を使ったり投機性の高い取引に手を出し、顧客をだまして口座から8555万円を引き出していたことが発覚したのだ。堅いイメージの銀行マンが起こした事件として大きく報じられたが、経営陣がプライバシーにまで踏み込んだ調査に乗り出すのは、さらに苦い記憶が脳裏を過(よぎ)ったためかもしれない。

「滋賀銀行には昭和史に残るような横領事件があります。約半世紀前、山科支店の女性行員が偽造伝票を使って約9億円を引き出し、タクシー運転手の男に貢いでいたのです。後に金のほとんどが競艇と外車に消えていたことが分かっています」(地元紙のOB)

銀行側の説明は

 同行は、申告は任意であり、その結果で人事上の不利益を受けることはないとしている。だが一方で、申告内容が虚偽であった場合、厳正な対処を受けることもあるとの同意を求めてもいる。実質的な強要にも見えるが、同行に聞くと、

「これは行員の借金や金遣いを把握するのが目的ではなく、あくまで金銭の問題で困っている人がいたら早めに支援したいという趣旨で呼びかけているのです。2点目の行員間の金の貸し借りや、三つ目の投機的な投資についても、禁止事項ではありますが、正直に申し出た場合は処分されません。ただし、それは今回だけ。ワンアウトまでは大目に見るということです」(総合企画部の広報担当者)

 自己申告のペーパーはA4判1枚。提出しなければ怪しまれるし、うそを書いてバレたら処分される。悩ましい選択を迫られている行員は何人いるのだろうか。

週刊新潮 2022年11月10日号掲載

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