「誤審で一睡もできず」「ネットに“仰木監督を殺した”と書かれ…」 現役プロ野球審判らが語る舞台裏、現役選手で気に入られているのは?

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 日々、熱戦が繰り広げられるプロ野球。それを最も近い距離で見ているのが「審判」たちである。判定に命を懸け、時に選手や監督、ファンから猛抗議を受ける。そんな彼らが見た名選手・個性派監督の裏側を、スポーツジャーナリストの吉見健明氏がレポートした。

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 プロ野球シーズンも大詰めの日本シリーズを迎えた。今年の球界を振り返れば、ヤクルト・村上宗隆の史上最年少での三冠王獲得など、若い力の躍動が目立った。その一人が「令和の怪物」佐々木朗希(ロッテ)。4月に28年ぶりの完全試合を達成。新たなスーパースターが誕生したのである。

 その彼によって、別の意味で注目を集めたのが、審判の存在だ。

 ご記憶の向きも少なくないだろう。完全試合達成後、2試合目の登板となった4月24日、対オリックス戦2回裏。佐々木が投じた一球に、白井一行球審が下した判定は「ボール」。すると佐々木は、うつむき加減でニヤリと笑ってマウンドから二歩、三歩と降りた。その仕草に白井球審が険しい顔つきになってマウンドに歩み寄る場面があった。

 すると、SNSなどではファンの怒りが爆発。白井球審に対し、「大人げない」「イキっている」などの罵声が浴びせられ、審判長や選手会が対応に追われる騒動に発展したのだ。

 実は完全試合の次の試合も、佐々木は8回まで一人の走者も許さないピッチングを続け、降板した。件の一戦はその次の試合であり、佐々木の快投がどこまで続くか、ファンの期待は高まっていた。そんな彼らにとって白井球審の行為は、そのスターに傷を付けるものと受け止められたのだろう。

「表立って注意をすると…」

「誰が正しいとか間違っているとかではありませんが……」

 と語るのは、NPB(日本野球機構)のさる現役審判である。

 NPBは当事者をはじめ審判団に対し、この件に関してはノーコメントに徹するように指示した。箝口令を敷き、事を大きくしないように神経を使っていたが、今回、重い口を開いてくれた。

「ルールの上ではボール、ストライクの判定への抗議は禁止されている。ルールにある以上は、佐々木の態度に審判が注意を促す。それは当然のことです」

 と同僚の行為に理解を示す。

「が、相手は若いし、これからの球界を背負っていく大投手と見込まれるだけに、感情を出さず、後で監督などを通じて“ルール違反で退場になりますよ”と注意を促すのが得策だったのではないかと思います。表立って注意をすると注目されて今回のようにすごいことになります。パフォーマンスと誤解されますからね」

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