秋ドラマに尾上松也、梶原善、安田顕が出演… 良い助演俳優の条件とは何か?

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 10月ドラマが始まり、主演俳優たちが注目の的である。もっとも、忘れちゃならないのが、助演俳優の存在。いくら主演俳優が頑張ろうが、それだけでは名作にならない。良い助演俳優の存在が不可欠。では、良い助演俳優の条件とは何か? 引っ張りダコの尾上松也(37)、梶原善(56)、安田顕(48)の3人を例にして考えてみたい。

助演は主演を食ってはならない

 TBS出身のドラマプロデューサー・市川哲夫氏は理想の助演俳優像について、こう語る。

「助演の役回りとは、主演の引き立て役であり、その矩(のり、守るべき法則)を越えてはならない。いわば助演は主演を食ってはいけないが、観終わったら主演に匹敵する印象を残す。これが理想です」(市川氏)

 俳優の大半は「食う」「食われる」という言葉を嫌う。ドラマづくりはチームプレイだからだ。
 市川氏はこうも言った。

「主演も演じられる力量を持ちながら、助演に徹することを楽しむ名優たちもいます」(市川氏)

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で上総広常を演じた佐藤浩市(61)や7月期ドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS)で主演の永野芽郁(23)を支えた西島秀俊(51)たちがそう。出過ぎず、それでいて強い印象を残した。

10月期ドラマの助演たち

 10月期ドラマで目を引く助演俳優は、まず尾上松也。「鎌倉殿の13人」で後鳥羽上皇を演じながら、「親愛なる僕へ殺意をこめて」(フジテレビ)で半グレ集団のリーダー・佐井社(通称・サイ)に扮している。

 後鳥羽上皇は自信過剰で冷たい性格であるものの、見るからに高貴な人物。一方のサイは見た目も気性も下品なアウトローで、売春クラブ「アリス」を運営し、女性にも平気で暴力を振るう。

 後鳥羽上皇とサイのキャラクターは両極端。それを難なく演じ分けてしまうのだから、松也の演技力は飛び抜けて高い。

 松也は1月期ドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)では軟派な刑事・池本優人を演じた。4月期ドラマ「やんごとなき一族」(フジ)では超内向的なお坊ちゃま・深山明人に扮した。似たキャラが1つとしてない。連投しながら見飽きさせないのもうまいからである。

 一時期、「カメレオン俳優」「役柄が憑依する」といった言葉が流行したが、俳優がカメレオンになれるはずがないし、役柄が憑依するなんて不可能。では、どうして次々と違った役柄が演じられるかというと、才能があるうえに努力を重ねてきたからだ。

 松也もそう。初舞台は5歳の時で、これは歌舞伎界では一般的な年齢だが、2009年からは歌舞伎の自主公演「挑む」を主宰し始めた。人一倍、稽古に励んだ。

 一方で歌舞伎以外の芝居にも進出した。2012年には故・蜷川幸雄氏演出の「騒音歌舞伎(ロックミュージカル)ボクの四谷怪談」でお岩役を演じた。これが大評判となり、映画やドラマから出演依頼が相次ぐようになる。

 松也はドラマや映画、演劇に出演する理由について問われると、「もっと歌舞伎を知ってもらいたいから」と常々語っている。歌舞伎界の1人としてドラマなどに出ている意識が強いから、半端な役づくりはしないはずだ。

 そもそも歌舞伎俳優は幼いころから演技や所作などを学んでいるので、表情のつくり方や身のこなし方が断然うまい。だから松也の「親愛なる僕へ殺意をこめて」のサイは無言でも恐ろしい。全身から殺気が漂っているように見える。

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