ガソリン価格は今後、値下がりする可能性高まる だが新たな“懸念材料”が

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 日本にもインフレの波が押し寄せてきている。

 8月の消費者物価指数は前年比2.8%増と約31年ぶりの上昇率となった。エネルギーや食料品などの価格の押し上げで5ヶ月連続の2%台となっている。

 残念ながら、インフレはさらに進む可能性がある。10月に6500品目以上の食料品の価格が値上げされる予定だ。液化天然ガス(LNG)価格が高止まりしていることから、電気・ガス料金のさらなる値上げも必至の情勢だ。

 ガソリン価格も高いままだ。政府は今年1月に補助金を導入し、給油所への卸値を抑えてガソリン店頭価格の上昇に歯止めをかけてきた。政府の補助がなければガソリン価格は1リットル=200円超えの状況になっている。

 ガソリン価格は為替と原油価格の動向で決まる。原料である原油はドル建てで取り引きされており、今回の高騰は円安に起因するところが大きい。

 為替レートは今年初めに1ドル=115円台だったが、足元では140円台となっており、円はドルに対して20%以上も下落している。このことは、日本に輸入される原油価格(円ベース)が2割以上も割高になってしまったことを意味する。

 大規模な金融緩和を維持する日本に対し、利上げを進める米国との金融政策の違いが直接の要因だとされている。さらに「原油価格の上昇により日本の貿易収支の赤字が続いていることが円安圧力となっている」との指摘もある。国際的に原油価格が下落しない限り、ガソリン価格が通常の水準に戻ることはないだろう。

 高値が続いているガソリン価格だが、今後、下落に転じる可能性が高まっている。9月に入り、国際的に原油価格の下落傾向が鮮明になっているからだ。

需要サイドには暗雲

 ロシアのウクライナ侵攻により、米WTI原油先物価格は3月、1バレル=130ドル超えとなったが、その後下落に転じ、9月23日には1バレル=80ドル割れとなり、1月以来の安値を付けた。

 今回の原油価格の高騰は供給サイド主導で起きた。西側諸国がウクライナに侵攻したロシア産原油を市場から締め出す動きを示したことに「国際市場で深刻な供給不足が起きる」との懸念が生じ、いわゆるロシア・プレミアムが原油価格を急騰させた。

 だが、市場関係者の懸念は短期間で終わった。

 欧米から締め出されたロシア産原油は割安価格でインドや中国に大量に輸出され、インドや中国に輸出されていた中東産原油が欧米に渡ったために、国際市場で原油が不足する状況に陥らなかったからだ。最近ではインドや中国に輸出されているロシア産原油の割引額は急速に縮んでおり、「世界の原油市場の再配分は終了しつつある」と言っても過言ではない状況だ。

 供給サイドの混乱は収まる一方で、需要サイドには暗雲が立ちこめつつある。

 米連邦準備理事会(FRB)や英イングランド銀行などが相次いで大幅利上げを決めるなど利上げモードが経済を冷やし、原油需要が減少するとの見方が広まっている。不動産市場の不調やゼロ・コロナ政策が災いして、中国の原油需要が30年ぶりに減少するとの見方が出ていることも原油価格の下押し圧力となっている。

 OPECとロシアなどの大産油国で構成されるOPECプラスは、原油価格の下落を阻止するために減産に転じる可能性があるが、需要に陰りが見える状況下で強引に価格の下支えをしようとすれば、需要がさらに縮小するという副作用を招いてしまう可能性がある。

「1バレル=80ドル割れした原油価格は今後60ドル台前半を目指す」との観測が出てきているが、「山高ければ谷深し」。世界経済の景気後退懸念が一層強まれば、60ドル割れも十分にありうるだろう。

 そうなれば、日本の貿易収支の赤字は解消され、ガソリン価格は政府の補助金がなくても通常の水準に戻り、「めでたし、めでたし」だ。

 暗いニュースが相次ぐ中で数少ない明るい材料になるはずなのだが、このシナリオを阻止しかねない動きがある。

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